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【レポート】土着ワークショップvol.13 藁細工/鳥のしめ縄
ツイート昨年の12/23、西蒲区福井にある旧庄屋佐藤家にて、13回目の土着ワークショップを行いました。今回初めて挑戦したのは、稲藁を使った「注連縄(しめ縄)」づくりです!
毎年、年末になると、スーパーなどに並ぶ神棚用の「注連縄」やお正月用の「しめ飾り」。新年を迎える際の当たり前の光景ですが、先祖や神様の存在を重んじたり、お神酒や供え物ともに、年神様や土地の神様を家に迎え入れたりすることは、日本人が昔から大事にしてきた精神性が表れていて、とてもすてきな風習だと思います。
注連縄とは、神を祀る神聖な場所を他の場所と区別する「結界」の機能をもつもの。8世紀初めに編纂された日本最古の歴史書『古事記』の中に「しりくめなわ」(尻を編んだまま切らないでおいた縄)という、「しめなわ」の大元となった言葉が出てくるほど、古くからあるものです。「外から悪いものが入らないように」と願いや祈りを込め、一般的に稲わらを左周りに縄綯いしてつくられます。その形も、ゴボウジメ、ダイコンジメ、ワカザリ、タマカザリ、マエダレなど(※森 須磨子「しめかざりのかたち」/『民藝 特集:しめ縄 673』より引用)、地域によって本当に様々な形があり、そのバリエーションを見ると、地域性や人間性、個性の違いなどを感じ、とても面白いです。
藁細工職人の山際辰夫さんのお宅に初めて伺った時、山際さんお手製の注連縄と玉〆めを拝見して以来、私(桾沢)はすっかりその魅力に取りつかれてしまいました。注連縄を、年初に玄関に飾ると、心がしゃんとして、お正月が終わっても家の中で飾り、時々それを見ると、日々の忙しさに忘れてしまいそうな「感謝」の気持ちを自然と持てる、不思議なスイッチのようなものだなと感じています。そして、そんな注連縄をいつか自分の手で作りたいと思い、2年越しで今回の企画に至りました。山際さんの注連縄は、素人が作るにはハードルが高いため、入門として「鳥」の形を選びました。鳥の注連縄は、高千穂や広島県のものなどを参考にしてつくりました。
さっそくワークショップの様子をお伝えしていきます。
新潟市内はもちろん、上越、三条、五泉、遠くは山形県鶴岡市から参加してくださった皆さんとともに、佐藤家の囲炉裏のある空間で、山際辰夫さん・ハツさんご夫妻を講師に作業をスタート。
材料の稲ワラは、山際さんの田んぼで青刈りしたワラを使用しました。
自己紹介のあと、さっそく縄に膨らみを持たせるための「芯」づくりから始めました。
3本の縄を綯うためには、3本の芯が必要です。ワラくずを適量とり、イグサを1本紐代わりにして、巻き付けていきます。
真ん中部分が分厚くなるよう、厚みを調節するとともに、なるべく表面が凸凹にならないよう均一に、イグサを巻き付けていくことがポイント。イグサを使う理由は、草の太さが均一で、少し湿らせば、しなやかな紐として使い易いからだと言います。
芯の次は、鳥の頭と尾っぽの間を結ぶ縄をつくるため、「縄綯い(通常の右綯い)」を学びました。
「縄を綯う」行為は、頭で考えるよりも、手と足を使って慣れた方がはやく覚えられるようです。
熱心に縄綯いを教えていらした山際ハツさんが、「わたしらは、家が農家だったから、冬は縄綯いがみんなの仕事。現金収入のために、学生の頃から手伝わされたの。1本何十mってやるもんだから、縄綯いなんて、身体にしみついているだわねぇ。」とおっしゃっていたのが印象的でした。
すでに縄綯い経験者の方もいらして、慣れた手つきで綯っていらっしゃいました。
まずは、やりやすい「右縄」の綯い方をマスターしてしまえば、これから行う注連縄の「左縄」も、逆方向に手を動かすだけなので、分かりやすくなると考え、この順番にしました。
縄綯いは、最初こそ手こずりましたが、みなさん、途中からはコツを掴み、リズミカルに縄を綯っていました。手が乾燥しているとすべって縄は綯えません。時折、水をつけ、撚りをかけながら、右回りに2本のワラ束を綯っていきます。ワラ束が細くなってきたら、数本を足して続きから綯っていきますと、長い縄の完成です。
続いていよいよ、「注連縄」の縄綯いに入ります。
太さを均一にするため、同程度のボリュームのワラ束を3つ用意します。
そのうちの2つを先から10cmほどのところで麻ひもで固く結びます。
そして、足でその結んだ部分をしっかりおさえながら、両手を使って、2つの束それぞれに撚りをかけながら、左周りに交差・回転させます。
次に、作っておいた芯を2本とり、それぞれの束の中に包むように覆い、そこへまた撚りをかけながら、左回りに交差・回転させます。
この撚りをかけながら、左回りに交差・回転を繰り返すと次第に縄はできあがっていきます。途中、芯をはみ出ないように隠しながら、上手に撚りをかけていくと、縄表面の仕上がりがきれいになります。
こうして、尾っぽ側からスタートした縄綯い作業を、鳥の首部分でストップし、適当な場所で麻ひもで縛ってとめます。
この左縄の骨格(2本の縄綯い)ができたら、そこに、もう1つのワラ束を絡み付けていきます。まず、尾っぽの先端部分に新たな束の端を合わせ、先ほどの2つの束を麻ひもでとめた位置で再び強く縛ってとめます。そして、芯を入れつつ、撚りをかけて、最初に綯った縄に巻き付けていきます。このとき、巻き付けが甘いと緩んだ注連縄になってしまうため、しっかりと力を入れながら、強く巻き付けます。こうして、注連縄部分は完成。
首の付け根部分を麻ひもで縛り、頭の部分は、全部のワラ束を鳥の頭をイメージして折り曲げ、口ばしのあたりでまた縛ります。こうして、鳥の胴体部分は完成です!
山際さんは、この「注連縄」づくりのプロ。一見すると、稲わらが「ずりずり」っと自然と手の中で縄になっていくような感じなのですが、触るとしっかりと強く撚りがかかっていて、手や足、全て動きに無駄がありません。30年以上も作り続けている経験が、この「音」と「動き」に凝縮されているのだなと改めて感じます。
さて、残るは、足となる「下げ飾り」2つを作るのみ。
下げ飾りは、足の長さの2倍の長さのワラ束を用意し、真ん中に芯となる短い縄を置き、均一にワラで包み隠し、その中心部分をしっかり紐で縛ります。その後、バナナの皮をむくように、周囲のワラを折り曲げていき、適当な場所で飾り紐(赤い絹の紐)で縛って、仕上げます。
鳥の尾っぽ、口ばし、足の先を好きな長さや角度で切りそろえます。最初に綯った縄で、尾っぽと頭部分を結んでつなぎ、好きな位置で固定します。
最後に、ボンドで「下げ飾り(足)」を好きな位置に挿んで固定し、鳥の注連縄の完成です!
ここまで3時間弱かかりました。みなさん、初めての挑戦でしたが、お一人お一人思いのこもった、すてきな鳥の注連縄ができあがりました!お疲れ様でした。
終了後には、福井の名物郷土菓子「本間屋の柚餅子」をそれぞれお持ち帰りいただきました。
きっと、みなさん充実した年末・年始を過ごされたことでしょう。この注連縄飾りは、お正月期間を過ぎても、部屋に飾ってずっと楽しむことができます。ご自身で稲穂を尾っぽに加えるなど、アレンジされた方もいらっしゃいました。それぞれのご家庭で、「鳥の注連縄」が、厄を払い、家の守り神のような存在になってもらえたら幸いです。
参加者のみなさん、山際さんご夫妻、珈琲を振る舞って下さった山上さん、そして、会場を貸して下さった佐藤家保存会の皆さん、本当にありがとうございました!!
※講師・山際さんのライフワークである「注連縄づくり」についての記事が新潟日報(12/18、夕刊)に掲載されました!後日、お宅を訪ねると、記事が額に入って飾られていました。
【「いい記念になった!」と嬉しそうに語る山際さん】