2017-01

ENZA w#003「鳥のしめ縄」@旧笹川家住宅 開催しました

2017年は、昨年12/11に開催したENZA workshopの3回目「鳥のしめ縄」づくりのレポートからスタートです!本年もどうぞ、室礼とブリコールをよろしくお願いいたします。

集合写真

酉年の今年にぴったりの“鳥”を形どった「しめ縄」。いわゆる神棚用の注連縄、牛蒡締めや輪(玉〆め)飾りなどはよく見かけますが、なかなかありそうで身近にはないお正月飾りの一つではないかと思います。企画した私自身も『民藝』(第673号 特集:しめ縄)という本からその存在を知り、写真などを参考にワラ細工職人の山際辰夫さんに試作をお願いし、ワークショップ実現に至りました。

DM

せつめい

お正月飾りも最近は様々なものがみられます。中には稲藁は使わず、水引や和紙、飾り紐、造花、手拭いなどで作られているものも店頭で見かけるようになりました。しかし、やはり「しめ飾り、しめ縄」といえば「稲藁」ではないかなと思います。

藁文化の研究者でいらっしゃる宮崎清先生(千葉大学名誉教授)は、「藁は、草冠に高いと書いて、下に木と書く。これは稲作が伝わって以来、主食としての米だけでなく、藁そのものが多種多様な生活の道具類に用いられ、全く捨てるところもない。木よりもっと利用価値の高い草なのだという意で、この字があてられたのではないか。いわば稲藁の文化は、日本の人々の心を支える大切な文化なのだ。」とおっしゃっています。

そんな稲藁を手で綯(な)い1つ1つ丹精込めてつくられる「しめ縄」は、時代は変われど、私たちの暮らしを支えてくれている大事な「生きる」ためのアイテムではないかなと思います。ENZAでは、ただ手を動かしてものをつくるのではなく、そういった「ものが生まれる背景」まで思い巡らせる、そんな時間と空間を今後もつくっていけたらいいなと思っています。

さて前置きが長くなりましたが、新潟市南区味方にあるの国の重要文化財、《旧笹川家住宅》にて、山際辰夫さんを講師に開催したENZA w#003の様子をお伝えします。

まずは、しめ繩の太い部分を作るための「芯」作りです。以前、カマダイ作りの際に余った穂先の藁を芯に使います。藁スグリをしたくず藁を使うこともできますが、初めての方でも綺麗に芯が作れるようにと山際さんがご用意くださりました。今回のワークショップでも、米寿の山際さんが昨年、春の種蒔きから青刈り、乾燥まで手をかけ作ってくださった青ワラを使用しています。

芯

畳店で余った畳をほどいて再利用している「イグサ」を紐代わりにして、くるくると巻きつけ、ばってんに交差して全体を巻き縛ります。芯を3つ用意したら、今度は縄ないのためのワラ束の準備です。

青ワラ

同じ太さになるよう、何度か左右で束を持ち替え、量を調節して3束作ります。

手で握る

そのうちの2束を取り、根元に近い側から15〜18cm程度のところを、紐でしっかり8の字に縛ります。ここが左綯いの起点になります。

縛る

続いて、ここを起点として足を使って抑え、両手で2束のわらに時計周りに撚りをかけ、それらを反時計周りに交差させていきます。この作業、職人の山際さんの手にかかれば、ザザッと両手を滑らかに動かされ、あっという間に撚りの力も適度に加わった左縄ができていきます。

縄ないスタート

撚りのかける向き

縄ない中

今回参加者の中には、「室礼」のHPを見て宮城県栗原市から駆けつけて下さったとても熱心な男性もいらして、縄綯いは普段教えていらっしゃるとのことで、さすが慣れた手つきで撚りをかけてます。

縄ない中2

縄ないに挑戦

2、3回交差させたら今度は、先ほどの芯を各々ワラ束の中に包み込み、縄綯いを続けます。この時、芯がワラ束の外から見えないようにすることがポイント。

芯を入れる

参加者のみなさんが、撚りをかけながらの縄綯いに苦戦したり、逆向きに撚りをかけたりしていると、順次、山際師匠の修正の手が入ります。

修正1

不思議と縄綯いをやり直しても、ワラには柔軟性があり、そこまで仕上がりに影響はないようです。

修正2

修正3

鳥の胴体のところの縄綯いが終わると、そこで一旦紐できつく縛って止めます。

胴体部分

さらにもう一つ残しておいたワラ束を、最初に8の字に紐で止めた起点に追加し、同様の撚りをかけます。途中で芯を挿入しながら、しめ縄に絡みつけていきます。綺麗に縄綯いできたら、三本縄綯いの作業は終了です。

三本目追加

3本目縄綯い

表面にぼそぼそと出てきたワラは、綺麗に切り整えます。

表面綺麗に

こうしてお腹に丸みのある、鳥のしめ縄の胴体部分が完成!

胴体完成

続いて、鳥の足の部分の「下げ飾り」を作ります。芯にはワラ縄を使い、その周りには、先ほどの藁束を切った残りを無駄なく使います。

足の芯

バナナの皮のように全方向にワラを折り曲げていくと、足の「下げ飾り」ができていきます。

下げ飾り

下げ飾り作成

下げ飾り2つ目

その後、顔づくりへ。胴体の先を顔をつくるように曲げ紐で固定。目打ちやドライバーで穴を拡げ、目になる部分を作ります。(少々痛々しいですが・・・)

目

イグサ縄ない

胴体や下げ飾りの作業に取り組む間、余力のある参加者の皆さんは、しめ縄本体をぶら下げるのに使う「イグサの縄綯い」に山際さんの手つきを見ながら、トライされていました。こちらの縄綯いは、右綯い(反時計まわりに撚りをかけ、時計回りに交差させる)です。

縄ない

見本の縄ない

縄ない3

イグサは、茎がまっすぐで枝分かれがなく、ワラのように途中でぼそぼそと出てこないので、出来上がる縄もつやっとした仕上がりになります。

完成したイグサ縄

位置決め

鳥の胴体部分を弓状に曲げ形を定めたら、先ほどのイグサ縄で引っ張って結びます。

足つける前

最後に、足(下げ飾り)をボンドで固定して出来上がりです!!

足つけ

完成

「イグサの縄綯い」は、凸凹が少なく平坦に長くできるのが特徴。慣れてくるとズリズリっといい音が出てくせになる作業です。先ほどの栗原市の男性が、隣の方に縄綯いを教えて下さったりして「車座になって集い、自分のできることを持ちより共有する」というENZAならではの光景も見られてうれしかったです。

縄ないを伝授

完成後は、南区月潟にある老舗の、お菓子司「まさや」さんの美味しい“みそ饅頭”を頬張りながら、出来上がった鳥のしめ縄を眺めたり、記念写真を撮ったりして過ごしました。

味噌まんじゅう

最後に、会場として使用させていただいた《旧笹川家住宅》は、昭和28(1953)年に民藝運動で有名な柳宗悦、濱田庄司らが、イギリス人陶芸家のバーナード・リーチを連れて訪れた場所。リーチは、1953~54年にかけて日本各地の窯場をめぐり、制作、講演会、展覧会、会合など多忙な日々を過ごしたそうです。リーチはその旅を克明に記録し、絵入りの日記に残しており、その中に「十月十二日 私たちは、これまでに見たうちで最も魅力のある家宅(※)の一つで夜を過した。ここには古い領主の家と、見事に釣合のとれた、静かで威厳にみちた庭がある。この家は「下手」(げて)ではなく、「上品」だ。しかも洗練され過ぎない立派さがあり、荒けずりな田舎じみたところは少しもない」と、感想を述べています。(柳宗悦訳、水尾比呂志補訳『バーナード・リーチ日本絵日記』講談社学術文庫 2002年)

※この家が笹川邸であったかどうかは、本の中では「笹川」の文字が見られないのですが、昭和45年刊の『郷土資料事典 新潟県・観光と旅』(人文社)の笹川家住宅に関する記述を参照しました。
>>追記 昭和30年8月発行の『民藝』(第32号)において、伊東安兵衛による「笹川邸を訪ねて」という記述の中で、確かにリーチらが笹川邸を訪れていたことを確認できましたので、上記は事実のようです。

民藝32号

笹川邸

ワークショップ当日、貴重な冬の晴れ間が見られた笹川邸の縁側。重要文化財なので電気や暖房などは最小のため、ほぼ屋外に等しく寒いです・・・(苦笑)

えんがわ

旧笹川家住宅は、江戸時代には味方8カ村を束ねる大庄屋であった名家で、当時から権威ある立派な佇まいだったと思いますが、時を下った今、空間に身を置いて感じるのは、大らかで素朴な自然との関わり、そしてそれを楽しむ余裕、自由な遊び心があったのではないかなと思います。また機会があればぜひ利用したいと思います。

参加者のみなさま、笹川邸の白倉さん、南区地域課のご担当者様、お菓子を紹介くださった堤さん、そして山際さん、どうもありがとうございました!!

【おまけの後日談】

鳥のしめ縄応用

栗原市の男性は、実は一般社団法人 くりはらツーリズムネットワークの事務局長をやられている大場寿樹さんで、ワークショップご参加後「さっそく宮崎清先生のご著書も読み、イグサも用意してオリジナルで作ってみました」とさらに改良を加えた「鳥のしめ縄」を創られ、画像を送ってくださりました。その行動力と応用力がすばらしいです!!くりはらツーリズムネットワークのHPを拝見すると「栗原地元食大学」「栗原手づくり市」など面白そうなプロジェクトの数々・・。多種多様な地元栗原での体験プログラムは、2015年度グッドデザイン賞も受賞されているそうです。新潟と栗原市は少し離れていますが、今後どこかで交流、またご一緒できる機会があればいいなと思います。大場さん、ありがとうございます。

booksf3

また「鳥のしめ縄」を気に入ってくださった、沼垂の《BOOKS f3》店主の小倉快子さん。後日、山際師匠が作られたものをお店にお届けに。素敵に飾って下さりました。写真はtwitter(@booksf3)から拝借。小倉さん、どうもありがとう!

Posted on 2017-01-24 | Posted in ENZA(えんざ), お知らせ, イベントNo Comments »