2016-03

藁細工職人・山際辰夫さんのこと。

今日は、山際辰夫さん・ハツさんご夫妻のことを書きたいと思います。

この写真は、いつも土着ワークショップの藁細工の講師としてお世話になっている、山際辰夫さん(昭和2年生まれの87歳)の手です。内側がツルツルしてますね。

山際さんの手

手の甲は、こちら。

山際さんの手2

内側がすべすべなのは、長年(30年以上)「注連縄(しめなわ)」づくりをやられてこられ、稲わらで縄綯いをする際、沢山こすれて指紋が無くなるくらいになってしまうからだそうです。

縄綯いの手

そんな山際さんが先日の3/1の新潟日報朝刊の「ひととき」に掲載されました。

<新潟日報の記事より>
山際辰夫さん

普段、何気ない会話の中でも伺っていることですが、改めて記事を読んで、「じいちゃんは、本当に藁細工やものをつくること(=手を動かすこと)が好きなんだなぁ」と実感します。

<山際さんご夫妻のつくった品々>
キビぼうき、棕櫚ほうき、草ぼうき、布草履、イグサ鍋敷き、カマダイなど
山際さん民具

山際さんに講師をお願いしたワークショップもこの3月で8回を数えます。

<土着ワークショップ「カマダイづくり」の様子>
カマダイづくり

ワークショップに参加された方はお分かりになるかと思いますが、ついつい「じいちゃん」と本当の親戚のように呼んでしまうのは、2013年の夏に出会ってからこの3年ですっかり、西区木場の山際さんのお宅に何度となく通いつめ、家族ぐるみで山際さんご夫妻、そして飼い猫(♀)の「にゃーにゃー」にもお世話になっているからです。

にゃーにゃー

特に昨年2015年は、水と土の芸術祭市民プロジェクトとして、「稲作文化ドキュメンタリー」というプロジェクトを私たちブリコールで企画し、その映像撮影のため、数か月間、ご夫妻の暮らしに密着し、あれこれお話を伺い、取材をさせていただきました。山際さんが一番得意とし、その暮らしの中心をなすと言っても過言ではない、藁仕事「注連縄」づくりに関わる稲の苗代づくりから、田植え、青刈り、乾燥、縄綯いまでを一緒に体験させていただいたのは、私たちにとっても貴重で、ありがたい経験となりました。

注連縄づくりの様子

じいちゃん、ばあちゃんの若かりし頃、熱中した地域の踊り(棒踊り、花笠踊)の話、農家の生活歳時記、藁やキビ、竹細工など、自然の素材を使ったものづくりの話、稲刈り鎌(道具)の扱いの話、犬の肉まで食べたときう戦中の話、今でも現役で用水路のドジョウを捕まえて食べている話等々・・・、一日では語り尽くせない本当に沢山のお話を伺いました。

<地元の神社の注連縄づくりにも尽力された>
しめなわ

その時の様子が一部見られるサイトは、こちら

ご夫婦の歴史や経験談を伺う中で、私はいつも彼らの生まれるずっと以前から連綿とつながっている“何ものか”の存在を感じます。時代の変化に寄り添いながらも、暮らしの技術や生きる知恵の大事な部分は引き受け、自分たちで工夫をこらし、あるいは苦労を重ねながら、今ある生活を楽しむこと。

短い時間の中でもお話を伺うことで、そういった彼らが当たり前に行い、過ごしてきたことを追体験(あるいは想像)できるような感覚があり、毎回とても楽しく、充実した時間を過ごさせてもらっています。そして、山際さんのお宅からの帰り道では、自然と力が湧いているというか、元気になっている自分がいます。

米の花と山際さん

そして、そんな2015年最後の嬉しいニュースは、12/17の新潟日報で山際さんの「注連縄づくり」の写真記事が載ったこと。ご本人もとても喜んでいました。この注連縄はブリコールでも2014年からオーダー販売させてもらっています。(詳細はこちら

<「記事を親戚が額に入れてくれたんだよ」と、嬉しそうに見せてくれた山際さん>
12月の記事

その後も日報さんの取材は続き、今回の3/1の記事につながったそうです。写真には写っていませんが、いつも山際さんの傍らにいるハツさん(山際さんの6つ下)と猫のにゃーにゃーの存在も欠かせません。

辰夫さん、ハツさんの「あ・うん」の呼吸は、さすがです。最近のワークショップも2人で、講師を務めて下さりました。こちらが教わっているのに、「いろいろ勉強になったよ、ありがとう」とおっしゃるハツさん。その柔軟さには頭が下がります。

山際さん夫婦

先日も何気ない会話の中で、いつもお二人でスーパーに買い物に行くという話を聞き、その光景を思い浮かべて、「すてきだなぁ」と思いました。

<道路脇で青刈りした藁を干すお二人>
藁干し

<山際さんの藁すぐりの様子を見守るハツさん>
藁すぐりすぐり

そんな人生の大先輩である山際さんご夫妻には、まだまだ長生きしてもらって、色々教わりたいなと思っています。これからも足繁く通いたいです。

最後に、2/28に開催した「流しびなづくり」の記事がまたまた日報の地域欄に載ったので、その記事をUPします。

3/3新潟日報記事

この春からは、また来年の注連縄用の稲作が始まるのでしょうか。

<山際さんの田んぼ>
2015青刈り

「膝がいとうて(痛くて)、もう今年は無理だよ」とおっしゃる山際さんの声を聴かなかったふりして、「じいちゃんばあちゃんと、そして次は娘も一緒に田植えしたい」と、頃合いを見て伝えようと思います。

 

【レポート】土着ワークショップvol.14 「流しびな」(②後編:紙びな&折形)

2/28に行った土着ワークショップ(DWS)「流しびな」づくりのレポートの(後編)です。

(前編)でつくった「桟俵(さんだわら)」の舟に乗せる紙びなづくりは、まず着物選びから。様々な古布の中から、お雛様、お内裏様の着物を好きな組み合わせで選びます。

古布

布えらび

用意しておいた厚紙に合わせて、5ミリ程度多めに布を切っていきます。

布を切る

ボンドで厚紙に布を貼りつけます。

ボンド

全景

続いて、紙粘土の顔に髪や表情を書き込んでいきます。真剣な様子でみなさん、顔を描かれていました。全作業の中でここが一番緊張します。

顔書き

顔かき

顔

顔ができたら、着物の厚紙に穴をあけ、差し込んで、好きな位置で固定します。

紙ひな

そして今度は、桃の花を包む「花包み」の折形(おりがた)に取り組みました。

折形

折形(おりがた)とは、贈答や室礼などの際に用いられた、紙を折って物を包む日本の礼儀作法の1つ。平安時代に各武家で独自の折形が考案され、江戸時代には、庶民にも広まり、各家々や流派によって様々に伝承された作法があります。今回は、小笠原流の包み方を参考に、折線のガイドをもとに折り込んでいきました。吉事には2枚、凶事には1枚で折るものですが、今回は、飾り用として透けた紙1枚を用いて、柔らかい雰囲気の「花包み」にしています。

折形1

折形2

折形3

「花包み」の形ができたら、桃の造花を入れ、下の方を折り曲げ、その少し上を飾り紐でしばります。

花包み

最後に菜の花と室礼のお手製「お守り札」も添えて、竹ひごで紙びなとともに固定したら、「流しびな」の完成です!!

仕上げ

母娘の親子でご参加下さったお母様も嬉しそう。

お母さま

会場は、つづいて完成した「流しびな」を眺めながらの「お茶会」に模様替え。

お茶会スタート

KOKAJIYAのスタッフの細貝さんと清水さん(写真は清水さん↓)に、今回もお菓子とお茶を担当していただき、“春”を感じさせるすてきなプレートに仕上がっていました。

スタッフ

KOKAJIYAの真向かいにある老舗和菓子店『角屋悦堂』のご主人のつくる和三盆はとっても上品で美味。ウグイスに姫みずきの花を添え、物語の一場面のようです。

うぐいす

スタッフお手製の甘納豆は、KOKAJIYAの今月の甘味菓子として提供しているものだそうです。北海道産の黒豆、大福豆、紫花豆、青エンドウ豆の4種で彩りもきれい。味もそれぞれの個性があっておいしいです。

甘納豆

そんなほんのり甘いお菓子には、「桜茶」をチョイスしてくれました。桜茶は、KOKAJIYAスタッフがお茶の先生に習って覚えたレシピとのこと。塩味が効いていて、お菓子にぴったりでした。

プレート

お茶会の様子

お茶会のUP

しばしの歓談で“春の訪れ”を一足先に楽しんだあとは、恒例の記念撮影タイム!

<午前の部>
午前の集合写真1

<午後の部>
午後の集合写真1

親子で参加された方や、遠方の柏崎からもお出でいただいた方もいらしたりと、今回もまた楽しいワークショップとなりました。ご参加されたみなさま、山際さん、KOKAJIYAのスタッフ、そして、藁をご提供いただいた農家の山上さん、どうもありがとうございました。

さらに、このレポートを書いている今日はひな祭り。嬉しいことに、新潟日報の3/3朝刊の「下越版」に大きく掲載いただきました。(下写真↓)ありがとうございます!

3/3の日報記事

最後に、完成したみなさんの「流しびな」を並べます。紙ひなの表情や着物だけでなく、桟俵の形もみな異なり、それぞれに愛らしい作品ができあがりました!

完成午前

完成午後

Posted on 2016-03-03 | Posted in お知らせ, 土着ワークショップ [DWS]No Comments »

 

【レポート】土着ワークショップvol.14 「流しびな」(①前編:桟俵)

新潟も少しずつ寒暖を繰り返しつつ、春めいた空気を感じるようになってきた2月の終わり。2016年に入って最初の土着ワークショップ(DWS)となる「流しびな」づくりを開催しました!

「流しびな」は、「ひな祭り」の元となったといわれる年中行事。旧暦3月3日の節句の日に、災いを祓(はら)うために人形を形代(かたしろ)にして、けがれをのせて川や海に流す習慣が、京都の下鴨神社や鳥取県用瀬(もちがせ)などで、今も各地に残っています。子どもの健やかな成長を願い、祈りを込めて水に流す「流しびな」。その藁細工の舟や紙びなの造形がすてきなので、ひな祭りに向け、飾るための「流しびな」をつくるワークショップを室礼ではこれまで2回行ってきました。

流しびなしあげ

チラシ

今回は3回目ということで、初めて午前と午後の2部に分けて行いました。午前・午後の写真を織り交ぜながら、(前編)=桟俵づくり、(後編)=紙びなづくり&折形に分けて、当日のレポートをしていきたいと思います。

午前中は、新潟日報さんが取材に来られ、参加者の方へのインタビューがあったりと、いつもと少し違った雰囲気に。幸い外はうっすらと晴れ、自然光の入る室礼の空間で、おだやかなワークショップがスタートしました。

干しわら

最初は、稲藁(わら)でつくる舟の「桟俵(さんだわら)」づくりです。材料の稲藁は、岩室温泉のすぐご近所「夏井のはさ木」で知られる夏井の稲作農家さんから分けていただいた、はさがけ米の“干し藁”を使用。

稲わら

昔の人は、お米を手作業で天日に干し、脱穀して残った稲わらを、様々な生活の道具に利用してきました。特に農家の人にとっては、冬の農閑期の藁仕事が生活を、家計を支えていました。それが今では、機械によって収穫の際に、ほぼ全て細かく砕かれて田んぼにまかれるため、米どころ新潟といえども、なかなか藁自体は手に入りにくいものになっています。

そんな稲藁を穂先から根元まで無駄なくすべてを使い切るという、かつての人々の知恵にならい、私たちブリコールでは、2013年から土着ワークショップの中で、藁細工に取り組んできました。「桟俵」は、いわゆる米俵の側面に使われる「ふた」の部分のこと。本物の米俵は大きさが大きいので、大人の男性が丸い石の重しを藁の上に乗せ、その上にのっかって編み込んでいく作業を行っていくのが、かつては当たり前に見られた光景だったそうです。

「流しびな」の桟俵は、紙びなを乗せる舟なので、直径は20cm程度。その上にのっかって全身で作業するには、小さすぎて大変です。そこで西区在住・藁細工職人で、いつもお世話になっている講師の山際辰夫さんが手元で座って作業できるお手製の木製器具を考案。それを私たちが、コピーさせてもらってワークショップでは使っています。

山際さん

器具1

一人ずつ配られた藁の束をまず、根本をそろえ、下から25~30cm位のところで強く縛ります。山際さんは強く縛るために、測量用の糸を使っているとのこと。ポイントはしっかり強くしばることです。

揃える根元

しばる1

続いてバナナの皮のように、縛った中心部分から片側をしっかりと、均一になるよう折り曲げていきます。

皮むき1

皮むき2

片側が終わったら、上下を反対にして、もう片方も折り曲げます。

もう片方皮むき1

このとき、床に結んだ中心部を押し当てながらやるとうまく折れます。

もう片方皮むき2

折り終了

このようなかたちで、稲わらに折りくせがついたら、木製器具の円盤2枚で挟み込んでいきます。このとき、稲の根元がある方の面を上側にして、下側の面に穂先(細い方)がくるようにすると、紙びなの背後にくる俵の内面の稲わら(根元の太い方)が綺麗に見えます。

挟み込み1

中心がずれないようにはさみ、しっかりと器具本体にネジで固定します。

固定

きっちり固定するまえに、全体的に稲藁が均等にくるように調整しなおし、均一に広がったらしっかりと固定します。そして、円盤(直径20cm)の外側のラインから10~15cmのところで、稲わらを切りそろえます。

きる

切る2

均一

まあるく切り揃ったライオンのたてがみのようになったら、いよいよ編み作業のスタートです。

たてがみ

まず最上部で、左手に6本程度のワラ束(A)をつかみ、右手にその隣のワラ束(B)を5本程度つかみます。Bをそのまま少し垂直にたてておき、Aを2回Bに絡ませ(回す)、Aのうち2本をそのままに、残りの4本を右横に倒しておきます。次に、右となりの4,5本のワラ束(C)をつかみ垂直におこし、その後ろでBを右に曲げます。次のワラ束(D)を掴み、Cをその後ろで右に曲げていく・・・この作業を円盤の縁になるべく線が揃うように繰り返していき、最初の地点まで戻ります。

編みはじめ

はさがけした稲わらの場合、乾燥が強いため、ワラが途中で切れないよう霧吹きで水分を含ませながら編み作業をするのがポイント。

編み途中

編み込む位置をきれいに円盤の外周に沿って進めるときれいな円に仕上がります。

編み作業中

新潟日報の西蒲エリアを担当する記者の方が、「地域欄」掲載のために、流しびなの見本と作業中の風景とを両方交えながら、「はい、じゃあこれで撮りますよ~」とセッティングして撮影されていました。土着ワークショップでは、いつも沢山の記録写真を撮るのですが、こういった取材は初めてだったので、こんな風に撮影するのだなと、なんだか新鮮でした。

撮影

午前、午後の部ともにみなさん、とても器用な方が多く、どんどん編み進めていらっしゃいました。

途中

途中2

一周編みあがったら、最初に残しておいた2本のワラと最後のワラ束を交差させてねじり、円盤の中に入れ込みます。これで、編み込み作業は終了です。桟俵の外形が出来上がりました!

最後

最後の入れ込んだ部分をおさえながら、器具から桟俵を取り外します。

はずす

続いて、円周に沿って飛び出している藁束を、内側に丸め込みながら、舟の縁を作っていきます。

丸め込み

丸め込み2

丸め込みとかがり作業

丸め込んだ後は、ぼそぼそと出てこないよう糸でかがっていきます。

糸かがり1

糸かがり2

下の写真ように、糸でかがらずとも、きれいな桟俵ができた方もいらっしゃいました!

糸なし

これで流しびなの舟「桟俵」の完成です! 続いて、レポート(後編)「紙びなづくり&折形」へ。

(後編)で完成する「流しびな」の見本↓

見本

3月いっぱいは、この「流しびな」を室礼に飾っています。どうぞKOKAJIYA2階までお気軽に上がってみてください!

勉強室の様子

また、岩室温泉界隈では「ひな巡り」のイベントも開催中(〜3/22まで)!
※「岩室温泉ひな巡り」詳細は、こちら

ひな巡り

Posted on 2016-03-03 | Posted in お知らせ, 土着ワークショップ [DWS]No Comments »