土着ワークショップ [DWS]

ENZA w#001「干し柿」@武田家住宅 開催しました

曇りや雨の続く晩秋。木の葉が色づいたと思ったら、いつの間にか落ちはじめ、新潟も一歩ずつ着実に冬に向かっています。そんな中ぽっと晴れ間を見せてくれた10月最後の日曜日。『ENZA(えんざ)』のワークショップ第1回目となる西区木場、旧武田家住宅での干し柿ワークショップを開催しました。

柿のアップ

集合写真

前日の夕方、巻町の柿農家・三根山農園の長津やすおさん宅に、丹精込めて育てた渋柿を取りに伺いました。10月下旬に入り、昨年より少し遅めの収穫だったという「越王おけさ柿」と呼ばれる角田山山麓のブランド柿。その出荷規格は厳しく、少しでも日焼けや青み、入れ墨と呼ばれる染みがあると規格外としてセンサーではじかれてしまうそうです。その中からワークショップ用に180個分けてくださいました。

越王おけさ柿

実物を見るとなんら問題なさそうに見える、いやむしろとても立派な柿で驚きます。「おけさ柿」で知られる種のない「平核無(ひらたねなし)」は、水分が多く、肉質が緻密で、甘みも栄養もたっぷりな渋柿です。それを1~2か月かけて「干し柿」にしていきます。

囲炉裏を囲む

『ENZA』では、「そこにあることを、自分ができることに変えていく。」ということをテーマに、1つの場をぐるりと囲んで寄り集まって、そこかしこにある「興味のあること」を参加者みんなで深化させる機会と場をつくっていこうと考えています。

干し柿眺める

「干し柿をつくる」という行為にも、様々な先人たちの知恵、地域の風土や文化、人々が生活の中で脈々と伝えてきた思想や積み重ねが詰まっています。私たちブリコールは、そういう「行為の奥にある何か」をそれぞれが見つけ出すきっかけや機会を作り、そこにあることを自分に引き寄せて、活かしていくことができるような“関係づくり”を意図しています。

会場の旧武田家住宅では、すでに新潟市文化財センター職員の方が、敷地内の柿の木の柿を使って干し柿づくりを始めていました。こちらは、縦にぶら下げるタイプと、串に挿すタイプの干し方でした。

武田家の干し柿

18世紀前半に木場地区に建てられたといわれる旧武田家住宅の茅葺き屋根の軒下。縁側にちらりと見える柿の点々が、かわいらしく、またよく似合います。この隣りには、近々大根も干されるそう。ひと昔前までは、町のあちこちの軒先に見られた生活の風景ですね。職員の方も『こうして軒下を実際に使うのがいいんですよね。ただ保存するんじゃなくね』とおっしゃっていたのが印象に残りました。

武田家

そんな武田家の一角を使わせていただきました。干場は2か所、南東向き(玄関向かって左脇)と北東向き(玄関右横の側面)の軒下です。干す場所による違いも見ていきたいと思います。

縁側からの光が美しい囲炉裏のある茶の間で、参加者のみなさんとともに「皮むき」の作業をスタート。

説明

これまで「土着ワークショップ」で秋葉区タカツカ農園の高塚俊郎さんに教えていただいた方法とコツなどをお伝えしました。また、今回初めてワークショップに際して『干し柿の栞』を作り、お配りしました。干し柿や柿に関して調べたり、経験談をまじえた作り方のコツ、柿の利用例などをまとめました。

しおり配布

そしていよいよ本題の皮むき作業へ。

皮むき見本

皮むき開始

大きめの柿だったので、剥き慣れるまで、表面が多少でこぼこしますが、数個やるうちにみなさんとても綺麗に剥いて下さりました。

皮むき

とそこへご近所に住んでいる「土着ワークショップ」ではおなじみのワラ細工職人の山際辰夫さんが参入!私たちの様子を気にかけて下さり、遊びに来て下さりました。

山際さん

するとまたそこへ武田家住宅の見学の方いらして「何やってるのかね?干し柿かね?」とたずねられ・・

干し柿かね

はい

いつのまにかみなで雑談に。そしてなんと偶然にも年配の男性のお一人が、「私、この武田家に高校生まで住んでいたんだよ!」とおっしゃり、まさに武田さんご本人(写真一番左)でした。

皮むきはじめ

そんなサプライズもあり、話に花が咲くと、今度はもうお一人の男性が「私にちょっとやらせてみてよ」と包丁を手渡すと、とんでもなく見事な包丁さばきでささーっと柿の皮を剥いてしまいました。

二人で皮むき

「君たちの手つきでは危なくて、こういうのは昔からやってるから得意なんだよ」と笑っておっしゃいました。何でも先生はいるものですね。道具の使い方や感覚が手に沁みついている感じでした。学びたいところです(汗)山際さんともお知り合いのようで、みなさん包丁をとって立ったまま楽しく皮剥きにご参加されていました。

山際さんも参戦

それを見ていた山際さんも「どれ、そんじゃ俺も…」と見事な手さばきを見せて下さりました。

山際さんの皮むき1

山際さんの皮むき2

山際さんの皮むき3

お爺さん方の光景がなんとも微笑ましく、思わぬ偶然で楽しい時間になりました。

無心にやる

参加者のお一人は「無心にやれるこの時間がすごくいい」とおっしゃっていて、私も同感です。

皮むき遠目から

集中皮むき

ひたすら皮をむき続けること1時間あまり。むいた皮は綺麗なものは持ち帰りました。そのまま乾かして、柿チップスにもできますし、大根などと一緒に漬けると甘みや風味がでるとのこと。

皮むきおわり

続いて、柿を干す前の「湯通し」作業に入ります。

湯通し作業へ

湯通し1

湯通し2

山際さんは「これまで湯につけたことなんてないよ。でもカビが生えにくくなるなら、面倒くさがらずに次回からやってみようかね」とおっしゃっていました。

干し場準備

干し柿専用の柿クリップとシュロ縄で干し場の準備をして、湯通しした柿を次々に干していきます。

干し開始

ネックレス状に干すこのやり方は、柿同士や紐と柿がぶつからず、綺麗に仕上げられると高塚さんに教えていただきました。

干し作業1

干し作業2

後ろ

干し作業3

人数が少なめでしたので180個全ては干せませんでしたが、お天気に恵まれた午前中いっぱいを使って、楽しく前編の皮剥き&干し作業まで終えることができました。

その後はお茶タイム。

お茶請け

ビタミンCたっぷりで独特の甘みの柿の葉茶と佐渡の「柿餅本舗」さんの干し柿、弥彦の玉兎をお出ししました。そして駄洒落で「柿の種」も。山際さんの育てた二番穂(7月末、藁細工用に青刈りした後に出てきた穂)の稲穂も添えて。

お茶時間

新潟のスーパーには「米菓」とは別に「柿の種」コーナーがあるほど、身近な柿の種。元祖柿の種で知られる浪花屋製菓さんのパッケージ裏には、なぜ柿の種と呼ばれるようになったかが書かれていました。気になる方は、スーパーで探してみてください(笑)

今回『干し柿の栞』を作った際に、参考に、また引用した本を並べました。
本の話

本の説明

しばし談笑の後、記念撮影をして終了となりました。

談笑

最後に、サプライズをもう1つ。皮むき作業に入ろうとした時、参加者のお一人が「小学校同じでしたよね?」ともう一人の方に声をかけられていて、「えっ!あ、そうかも…」「おっ、お久しぶりです!」という会話が聞こえてきて、なんと同じ小学校の同級生だったことが分かりびっくり!卒業以来の再会だったそうです。そしてまたその小学校名が「真砂小」と聞いて二度びっくり!私桾沢も東京にあった(今は合併してしまった)真砂小の出身だったのです。なんだか偶然が重なった嬉しい余談でした。

柿アップ

次回は手もみ作業です。長津さん、参加者のみなさん、山際さん、ありがとうございました!会場のまいぶんポートの皆様にも感謝いたします。これから柿の様子を見守らねばならないので、引き続きお世話になります。まずはご報告とお礼まで。

干し柿武田家

*場所を変えて「干し柿」ワークショップを開催します! 〜参加者まだまだ募集中〜

【11/6(日)ENZA W#001「干し柿」@いわむろや/開催のご案内】

◇日時:2016年11月6日(日)10:00~12:30
◇会場:いわむろや 伝統文化伝承館
(新潟市西蒲区岩室温泉96-1)※無料駐車場あり
◇参加費:2,500円(“干し柿の栞”とお茶菓子付き、後日干し柿6個持ち帰り)
※中学生以下参加無料(持ち帰り干し柿6個は別途500円)
◇持ち物:エプロン、ハンドタオル、使い慣れた包丁、(屋外作業があるため)温かい服装、ビニール袋(皮を入れるためのスーパーの袋など)
◇定員:A,Bともに10名程度

<全体工程>
●前編(今回):皮むき&干し作業
●後編(次回):干し柿回収&揉み作業(約3,4週間後、同じ会場にて)
その後持ち帰り、又は、乾燥後受け取り(お渡し場所はご相談のうえ決定)

<お申し込み・お問い合わせ>
080-4051-1211 info@bricole.jp 担当:桾沢(ぐみざわ)
「お名前、人数、ご連絡先」をお知らせ下さい。

※お子様もご一緒に参加できます。お申し込みの際、ご相談ください。
※会場設営などお手伝いして下さる方を同時募集します。「手伝ってもよい」という方はお申し込みの際、ぜひお知らせください。よろしくお願いいたします!

主催:Bricole

 

“ENZA” 第1弾は「Workshop-#001干し柿」

W001チラシおもて

【 ENZA と ENZA Workshop#001「干し柿」 のご案内 】

この秋、Bricoleでは「ENZA(えんざ)」という新たな取り組みをスタートいたします。

テーマは「そこにあることを、自分ができることに変えていく」。

「ENZA(えんざ)」は、一つの場をぐるりと囲んで寄り集まって、そこかしこにある「興味のあること」を参加者みんなで深化させる機会と場を企図しています。「共に」見聞きし、体験することは理解の幅や応用の幅をぐっと広げてくれるはず。

具体的には、

●ENZA-W =以前の「土着ワークショップ」を引き継いだ形での実践ワークショップ(W)
●ENZA-T =様々な知識体験を持った方々を交えての座談会、トーク(T)
●ENZA-F =ただの旅行に留まらない探索や調査を交えたフィールドワークツアー(F)

などを企画してまいります。

ENZA 暫定HP:http://bricole.jp/enzaabout/

今まで「土着ワークショップ」も同様の思いで開催してきましたが、活動地域や視点をある程度絞っていました。ENZAでは「旅(たび)」が一つのキーワードになります。

ENZAの「たび」とは、「他(た)」の「火(ひ)」にあたりに行くこと、またその火を持ち帰ったり、あるいは自分たちの火を外と交流させること。御近所にお茶飲みに行っても、遠くに行っても、他の火にあたりに行く、「たび」と捉えます。

かつて民俗学者の宮本常一氏が、おけさ柿生産に町ぐるみで励んでいた佐渡の羽茂町を訪れた際、現場の雰囲気を以下のように評されました。

「誰でもが、いつでも、自由に立ち寄れて、どんな話でもできるところに良い指導者がいる。知恵が湧き、力が集積されて、生産文化が形成されていく。」

まだ産声をあげたばかりの「ENZA」ですが、ぜひそんな場を目指していきたいと思います。

さっそく、ENZAとして第1弾となるのワークショップ「干し柿」のご案内です。

晩秋から冬にかけての冷たい雨や風の気候条件のもと、渋柿を自然の力で栄養も豊富な甘柿へと変えていく、昔ながらの「干し柿」づくりの知恵。地域の特性を知り、生活の中での実験を通しての蓄積が技術となっていく、その経験のプロセスを参加者のみなさんと共有し、楽しみながら、「美味しい干し柿づくり」を探求していきたいと思います。干し場は2箇所ありますので、ご都合のつく方にお越しください。

W001チラシうら

/// ENZA-W001「干し柿」///

<干し場A>
◇日時:2016年10月30日(日)10:00~12:30 
◇会場:新潟市文化財センター(まいぶんポート) 旧武田家住宅
(新潟市西区木場2748-1)※無料駐車場あり

<干し場B>
◇日時:2016年11月6日(日)10:00~12:30
◇会場:いわむろや 伝統文化伝承館
(新潟市西蒲区岩室温泉96-1)※無料駐車場あり

◇参加費:2,500円(“干し柿のしおり”とお茶菓子付き、後日干し柿6個持ち帰り)
※中学生以下参加無料(持ち帰り干し柿6個は別途500円)

◇持ち物:エプロン、ハンドタオル、使い慣れた包丁、(屋外作業があるため)温かい服装、ビニール袋(皮を入れるためのスーパーの袋など)

◇定員:A,Bともに10名程度

<全体工程>
●前編(今回):皮むき&干し作業
●後編(次回):干し柿回収&揉み作業(約3,4週間後、同じ会場にて)
その後持ち帰り、又は、乾燥後受け取り(お渡し場所はご相談のうえ決定)

<お申し込み・お問い合わせ>
080-4051-1211 info@bricole.jp 担当:桾沢(ぐみざわ)
「お名前、人数、ご連絡先、希望日(干し場A or B)」をお知らせ下さい。

※お子様もご一緒に参加できます。お申し込みの際、ご相談ください。
※いずれの日も、会場設営その他のお手伝いして下さる方を同時募集します。「手伝ってもよい」という方はお申し込みの際、ぜひお知らせください。よろしくお願いいたします!

主催:Bricole

旧武田家住宅<干し場A:旧武田家住宅>

いわむろやの干し柿<干し場B:いわむろや>昨年の様子

KOKAJIYAでの干し柿※干し場Bでは、KOKAJIYAの軒先にも干します

手もみ作業後編の手もみ作業

干し柿完成完成した干し柿

 

三条スパイス研究所に「干し柿」出張WSに行ってきました

お天気に恵まれた10/16の日曜日、三条スパイス研究所へ、S研Works「干し柿づくり&干し場研究」と題したワークショップに、ブリコールとして夫婦で出張参加してきました!

私桾沢(ぐみざわ)厚子は、実験ナビゲーターとして今回初めて、参加者の方に教える(!)という立場で参加させていただきました。夫の和典は撮影係。これまで3回「土着ワークショップ」で干し柿づくりを行ってきて、講師のタカツカ農園の高塚俊郎さんに学んだことを生かしながら、自分の失敗や成功の体験を交えてのナビゲート役を精一杯やらせていただきました。

まずは集合写真から。みなさんの背後に、柿のネックレスがみえますでしょうか。40メートルに及ぶ低めの“軒下”が特徴的な三条スパイス研究所の建物をうまく利用して、雨も防ぎつつ、かわいらしく柿を干すことができました。
集合写真1

使用させていただいた渋柿は、三条市の下田、栄(ただいまーとさん)、新潟市西蒲区の西川(そら野テラスさん)の三か所から、もぎたてのものが届きました。
届いた渋柿

一部は干しやすいようにと「枝付き」のものでしたので、今回は仕上がりの綺麗さと専用のクリップを使っての干しやすさを考慮し、枝を切りました。
枝切り

干し柿用にするにはまだ少し早めではありましたが、300個も勢ぞろいすると圧巻です。
並べると圧巻

つやつやとして美味しそう・・・ですが、このまま食べると渋柿なので、舌がしびれる!渋さです。
つやつやした柿

さっそく皮むき指南から。
皮むき指南

余計な葉っぱ部分を切り落とし、四角いクローバーのような形に整えます。
皮むき1

皮をむくのはみなさんとてもきれいでした。一筆書きのようにやれると表面の仕上がりも滑らかで美しくなります。
皮むき2

たのしく談笑しながら。
楽しそう皮むき

包丁が苦手であれば、ピーラーでも大丈夫。お子さんもできます。
ピーラーでもOK

親子で参加して下さった方が多く、高校生も一生懸命にむいてくれました。
高校生でも

この皮は綺麗な部分はとっておいて、大根の漬物やぬか床に入れて使うと、漬物が甘く風味がつくそうです。捨てずに使おうということになりました。
皮も使う

私たちが作業していると、通りがかりのご近所の常連さんも飛び入りでご参加されることに。「干し柿づくりを昨年500個やったんだ。でも全部だめにしてしまった・・」とおっしゃる年配の方。そんな大先輩に教えるのがなんだかおこがましい感じでしたが、「なぜ500個がだめになったのか」を共有しながら考える良い機会だなと思い、ご一緒させていただきました。
通りがかりの参加

和気あいあいと楽しい時間です。
和気藹々

小1時間でしょうかあっという間に220個もの皮がむけました。
むいた柿

あとは、干す直前に表面殺菌のための湯通しを待つのみ。
出番をまつ

お湯が沸騰したので、さっそく湯通し開始です。いっぺんに6、7個鍋に入れ、20秒ほど数えます。
湯入れ

そして手早く湯を切ながら、ばんじゅうへ移動。
湯だし

湯切り

先ほどまで見ているだけだった子どもたちも「何手伝う?」と自ら湯通し担当を買って出てくれました。
手伝い

小学1年生も大事な戦力です。
猫の手

最初は穴あきのおたまで掬うのに手間取っていましたが、すぐに慣れてきます。
ばんじゅうにうつし

そしていよいよ干し場へ。柿クリップ(A型)という便利な専用クリップをセッティングしておき、そこへ一つずつ干していきます。
干す

干す2

この柿クリップ、半永久的に使え、また機能的なデザイン。実はこのクリップは三条市の有限会社ミネさんの生産だそう!まさしく地産地消ですね。ホームセンターでもこの時季になると手に入るので、おすすめです。
柿クリップ

干す3

この子どもたちと大人たちがワイワイできる場もうれしいですね。ステージ「えんがわ」と名がついた施設の意図がそのまま、この光景になっているのではないでしょうか。
こどもたちと大人たち

参加者のお母さんが、本当に指揮者のようでした。
指揮者さながら

お手の物

きれいに並べた

途中干し場を追加して、さらに干していきます。
干す4

これで前半となる干し作業は終了!後半は、3、4週間をあけて、手もみ作業に入ります。
完成

最後は記念写真。三条スパイス研究所のアートディレクターで、ケイ・アートの関川一郎さんによる撮影です。(本記事の最初の写真には関川さんご自身も写っています!)今回のレポート写真も、関川さんが自らご参加されつつ撮ってくださったものを一部使用させていただきました。この場をお借りして感謝いたします!
記念撮影

干し作業が終わってもなお、子ども達は遊び続けていました(笑)お天気もよく、とっても楽しいワークショップとなりました。
無邪気なあそび

この後お天気が崩れると聞いていたので、最初の1週間ほどの乾燥まで目が離せず心配ではありますが、ひとまず後編の「手もみ作業」まで、様子をうかがっていきたいと思います。

ご参加のみなさま、三条スパイス研究所の皆さん、山倉さん、堀田さん、ありがとうございました!!
そして、参加者のみなさまには、まだまだご自宅での「実験報告」という宿題もつけさせていただきました。引き続き、ワークショップへのご参加をよろしくお願いいたします!
夜もいい

Posted on 2016-10-18 | Posted in イベント, 土着ワークショップ [DWS]No Comments »

 

藁細工職人・山際辰夫さんのこと。

今日は、山際辰夫さん・ハツさんご夫妻のことを書きたいと思います。

この写真は、いつも土着ワークショップの藁細工の講師としてお世話になっている、山際辰夫さん(昭和2年生まれの87歳)の手です。内側がツルツルしてますね。

山際さんの手

手の甲は、こちら。

山際さんの手2

内側がすべすべなのは、長年(30年以上)「注連縄(しめなわ)」づくりをやられてこられ、稲わらで縄綯いをする際、沢山こすれて指紋が無くなるくらいになってしまうからだそうです。

縄綯いの手

そんな山際さんが先日の3/1の新潟日報朝刊の「ひととき」に掲載されました。

<新潟日報の記事より>
山際辰夫さん

普段、何気ない会話の中でも伺っていることですが、改めて記事を読んで、「じいちゃんは、本当に藁細工やものをつくること(=手を動かすこと)が好きなんだなぁ」と実感します。

<山際さんご夫妻のつくった品々>
キビぼうき、棕櫚ほうき、草ぼうき、布草履、イグサ鍋敷き、カマダイなど
山際さん民具

山際さんに講師をお願いしたワークショップもこの3月で8回を数えます。

<土着ワークショップ「カマダイづくり」の様子>
カマダイづくり

ワークショップに参加された方はお分かりになるかと思いますが、ついつい「じいちゃん」と本当の親戚のように呼んでしまうのは、2013年の夏に出会ってからこの3年ですっかり、西区木場の山際さんのお宅に何度となく通いつめ、家族ぐるみで山際さんご夫妻、そして飼い猫(♀)の「にゃーにゃー」にもお世話になっているからです。

にゃーにゃー

特に昨年2015年は、水と土の芸術祭市民プロジェクトとして、「稲作文化ドキュメンタリー」というプロジェクトを私たちブリコールで企画し、その映像撮影のため、数か月間、ご夫妻の暮らしに密着し、あれこれお話を伺い、取材をさせていただきました。山際さんが一番得意とし、その暮らしの中心をなすと言っても過言ではない、藁仕事「注連縄」づくりに関わる稲の苗代づくりから、田植え、青刈り、乾燥、縄綯いまでを一緒に体験させていただいたのは、私たちにとっても貴重で、ありがたい経験となりました。

注連縄づくりの様子

じいちゃん、ばあちゃんの若かりし頃、熱中した地域の踊り(棒踊り、花笠踊)の話、農家の生活歳時記、藁やキビ、竹細工など、自然の素材を使ったものづくりの話、稲刈り鎌(道具)の扱いの話、犬の肉まで食べたときう戦中の話、今でも現役で用水路のドジョウを捕まえて食べている話等々・・・、一日では語り尽くせない本当に沢山のお話を伺いました。

<地元の神社の注連縄づくりにも尽力された>
しめなわ

その時の様子が一部見られるサイトは、こちら

ご夫婦の歴史や経験談を伺う中で、私はいつも彼らの生まれるずっと以前から連綿とつながっている“何ものか”の存在を感じます。時代の変化に寄り添いながらも、暮らしの技術や生きる知恵の大事な部分は引き受け、自分たちで工夫をこらし、あるいは苦労を重ねながら、今ある生活を楽しむこと。

短い時間の中でもお話を伺うことで、そういった彼らが当たり前に行い、過ごしてきたことを追体験(あるいは想像)できるような感覚があり、毎回とても楽しく、充実した時間を過ごさせてもらっています。そして、山際さんのお宅からの帰り道では、自然と力が湧いているというか、元気になっている自分がいます。

米の花と山際さん

そして、そんな2015年最後の嬉しいニュースは、12/17の新潟日報で山際さんの「注連縄づくり」の写真記事が載ったこと。ご本人もとても喜んでいました。この注連縄はブリコールでも2014年からオーダー販売させてもらっています。(詳細はこちら

<「記事を親戚が額に入れてくれたんだよ」と、嬉しそうに見せてくれた山際さん>
12月の記事

その後も日報さんの取材は続き、今回の3/1の記事につながったそうです。写真には写っていませんが、いつも山際さんの傍らにいるハツさん(山際さんの6つ下)と猫のにゃーにゃーの存在も欠かせません。

辰夫さん、ハツさんの「あ・うん」の呼吸は、さすがです。最近のワークショップも2人で、講師を務めて下さりました。こちらが教わっているのに、「いろいろ勉強になったよ、ありがとう」とおっしゃるハツさん。その柔軟さには頭が下がります。

山際さん夫婦

先日も何気ない会話の中で、いつもお二人でスーパーに買い物に行くという話を聞き、その光景を思い浮かべて、「すてきだなぁ」と思いました。

<道路脇で青刈りした藁を干すお二人>
藁干し

<山際さんの藁すぐりの様子を見守るハツさん>
藁すぐりすぐり

そんな人生の大先輩である山際さんご夫妻には、まだまだ長生きしてもらって、色々教わりたいなと思っています。これからも足繁く通いたいです。

最後に、2/28に開催した「流しびなづくり」の記事がまたまた日報の地域欄に載ったので、その記事をUPします。

3/3新潟日報記事

この春からは、また来年の注連縄用の稲作が始まるのでしょうか。

<山際さんの田んぼ>
2015青刈り

「膝がいとうて(痛くて)、もう今年は無理だよ」とおっしゃる山際さんの声を聴かなかったふりして、「じいちゃんばあちゃんと、そして次は娘も一緒に田植えしたい」と、頃合いを見て伝えようと思います。

 

【レポート】土着ワークショップvol.14 「流しびな」(②後編:紙びな&折形)

2/28に行った土着ワークショップ(DWS)「流しびな」づくりのレポートの(後編)です。

(前編)でつくった「桟俵(さんだわら)」の舟に乗せる紙びなづくりは、まず着物選びから。様々な古布の中から、お雛様、お内裏様の着物を好きな組み合わせで選びます。

古布

布えらび

用意しておいた厚紙に合わせて、5ミリ程度多めに布を切っていきます。

布を切る

ボンドで厚紙に布を貼りつけます。

ボンド

全景

続いて、紙粘土の顔に髪や表情を書き込んでいきます。真剣な様子でみなさん、顔を描かれていました。全作業の中でここが一番緊張します。

顔書き

顔かき

顔

顔ができたら、着物の厚紙に穴をあけ、差し込んで、好きな位置で固定します。

紙ひな

そして今度は、桃の花を包む「花包み」の折形(おりがた)に取り組みました。

折形

折形(おりがた)とは、贈答や室礼などの際に用いられた、紙を折って物を包む日本の礼儀作法の1つ。平安時代に各武家で独自の折形が考案され、江戸時代には、庶民にも広まり、各家々や流派によって様々に伝承された作法があります。今回は、小笠原流の包み方を参考に、折線のガイドをもとに折り込んでいきました。吉事には2枚、凶事には1枚で折るものですが、今回は、飾り用として透けた紙1枚を用いて、柔らかい雰囲気の「花包み」にしています。

折形1

折形2

折形3

「花包み」の形ができたら、桃の造花を入れ、下の方を折り曲げ、その少し上を飾り紐でしばります。

花包み

最後に菜の花と室礼のお手製「お守り札」も添えて、竹ひごで紙びなとともに固定したら、「流しびな」の完成です!!

仕上げ

母娘の親子でご参加下さったお母様も嬉しそう。

お母さま

会場は、つづいて完成した「流しびな」を眺めながらの「お茶会」に模様替え。

お茶会スタート

KOKAJIYAのスタッフの細貝さんと清水さん(写真は清水さん↓)に、今回もお菓子とお茶を担当していただき、“春”を感じさせるすてきなプレートに仕上がっていました。

スタッフ

KOKAJIYAの真向かいにある老舗和菓子店『角屋悦堂』のご主人のつくる和三盆はとっても上品で美味。ウグイスに姫みずきの花を添え、物語の一場面のようです。

うぐいす

スタッフお手製の甘納豆は、KOKAJIYAの今月の甘味菓子として提供しているものだそうです。北海道産の黒豆、大福豆、紫花豆、青エンドウ豆の4種で彩りもきれい。味もそれぞれの個性があっておいしいです。

甘納豆

そんなほんのり甘いお菓子には、「桜茶」をチョイスしてくれました。桜茶は、KOKAJIYAスタッフがお茶の先生に習って覚えたレシピとのこと。塩味が効いていて、お菓子にぴったりでした。

プレート

お茶会の様子

お茶会のUP

しばしの歓談で“春の訪れ”を一足先に楽しんだあとは、恒例の記念撮影タイム!

<午前の部>
午前の集合写真1

<午後の部>
午後の集合写真1

親子で参加された方や、遠方の柏崎からもお出でいただいた方もいらしたりと、今回もまた楽しいワークショップとなりました。ご参加されたみなさま、山際さん、KOKAJIYAのスタッフ、そして、藁をご提供いただいた農家の山上さん、どうもありがとうございました。

さらに、このレポートを書いている今日はひな祭り。嬉しいことに、新潟日報の3/3朝刊の「下越版」に大きく掲載いただきました。(下写真↓)ありがとうございます!

3/3の日報記事

最後に、完成したみなさんの「流しびな」を並べます。紙ひなの表情や着物だけでなく、桟俵の形もみな異なり、それぞれに愛らしい作品ができあがりました!

完成午前

完成午後

Posted on 2016-03-03 | Posted in お知らせ, 土着ワークショップ [DWS]No Comments »

 

【レポート】土着ワークショップvol.14 「流しびな」(①前編:桟俵)

新潟も少しずつ寒暖を繰り返しつつ、春めいた空気を感じるようになってきた2月の終わり。2016年に入って最初の土着ワークショップ(DWS)となる「流しびな」づくりを開催しました!

「流しびな」は、「ひな祭り」の元となったといわれる年中行事。旧暦3月3日の節句の日に、災いを祓(はら)うために人形を形代(かたしろ)にして、けがれをのせて川や海に流す習慣が、京都の下鴨神社や鳥取県用瀬(もちがせ)などで、今も各地に残っています。子どもの健やかな成長を願い、祈りを込めて水に流す「流しびな」。その藁細工の舟や紙びなの造形がすてきなので、ひな祭りに向け、飾るための「流しびな」をつくるワークショップを室礼ではこれまで2回行ってきました。

流しびなしあげ

チラシ

今回は3回目ということで、初めて午前と午後の2部に分けて行いました。午前・午後の写真を織り交ぜながら、(前編)=桟俵づくり、(後編)=紙びなづくり&折形に分けて、当日のレポートをしていきたいと思います。

午前中は、新潟日報さんが取材に来られ、参加者の方へのインタビューがあったりと、いつもと少し違った雰囲気に。幸い外はうっすらと晴れ、自然光の入る室礼の空間で、おだやかなワークショップがスタートしました。

干しわら

最初は、稲藁(わら)でつくる舟の「桟俵(さんだわら)」づくりです。材料の稲藁は、岩室温泉のすぐご近所「夏井のはさ木」で知られる夏井の稲作農家さんから分けていただいた、はさがけ米の“干し藁”を使用。

稲わら

昔の人は、お米を手作業で天日に干し、脱穀して残った稲わらを、様々な生活の道具に利用してきました。特に農家の人にとっては、冬の農閑期の藁仕事が生活を、家計を支えていました。それが今では、機械によって収穫の際に、ほぼ全て細かく砕かれて田んぼにまかれるため、米どころ新潟といえども、なかなか藁自体は手に入りにくいものになっています。

そんな稲藁を穂先から根元まで無駄なくすべてを使い切るという、かつての人々の知恵にならい、私たちブリコールでは、2013年から土着ワークショップの中で、藁細工に取り組んできました。「桟俵」は、いわゆる米俵の側面に使われる「ふた」の部分のこと。本物の米俵は大きさが大きいので、大人の男性が丸い石の重しを藁の上に乗せ、その上にのっかって編み込んでいく作業を行っていくのが、かつては当たり前に見られた光景だったそうです。

「流しびな」の桟俵は、紙びなを乗せる舟なので、直径は20cm程度。その上にのっかって全身で作業するには、小さすぎて大変です。そこで西区在住・藁細工職人で、いつもお世話になっている講師の山際辰夫さんが手元で座って作業できるお手製の木製器具を考案。それを私たちが、コピーさせてもらってワークショップでは使っています。

山際さん

器具1

一人ずつ配られた藁の束をまず、根本をそろえ、下から25~30cm位のところで強く縛ります。山際さんは強く縛るために、測量用の糸を使っているとのこと。ポイントはしっかり強くしばることです。

揃える根元

しばる1

続いてバナナの皮のように、縛った中心部分から片側をしっかりと、均一になるよう折り曲げていきます。

皮むき1

皮むき2

片側が終わったら、上下を反対にして、もう片方も折り曲げます。

もう片方皮むき1

このとき、床に結んだ中心部を押し当てながらやるとうまく折れます。

もう片方皮むき2

折り終了

このようなかたちで、稲わらに折りくせがついたら、木製器具の円盤2枚で挟み込んでいきます。このとき、稲の根元がある方の面を上側にして、下側の面に穂先(細い方)がくるようにすると、紙びなの背後にくる俵の内面の稲わら(根元の太い方)が綺麗に見えます。

挟み込み1

中心がずれないようにはさみ、しっかりと器具本体にネジで固定します。

固定

きっちり固定するまえに、全体的に稲藁が均等にくるように調整しなおし、均一に広がったらしっかりと固定します。そして、円盤(直径20cm)の外側のラインから10~15cmのところで、稲わらを切りそろえます。

きる

切る2

均一

まあるく切り揃ったライオンのたてがみのようになったら、いよいよ編み作業のスタートです。

たてがみ

まず最上部で、左手に6本程度のワラ束(A)をつかみ、右手にその隣のワラ束(B)を5本程度つかみます。Bをそのまま少し垂直にたてておき、Aを2回Bに絡ませ(回す)、Aのうち2本をそのままに、残りの4本を右横に倒しておきます。次に、右となりの4,5本のワラ束(C)をつかみ垂直におこし、その後ろでBを右に曲げます。次のワラ束(D)を掴み、Cをその後ろで右に曲げていく・・・この作業を円盤の縁になるべく線が揃うように繰り返していき、最初の地点まで戻ります。

編みはじめ

はさがけした稲わらの場合、乾燥が強いため、ワラが途中で切れないよう霧吹きで水分を含ませながら編み作業をするのがポイント。

編み途中

編み込む位置をきれいに円盤の外周に沿って進めるときれいな円に仕上がります。

編み作業中

新潟日報の西蒲エリアを担当する記者の方が、「地域欄」掲載のために、流しびなの見本と作業中の風景とを両方交えながら、「はい、じゃあこれで撮りますよ~」とセッティングして撮影されていました。土着ワークショップでは、いつも沢山の記録写真を撮るのですが、こういった取材は初めてだったので、こんな風に撮影するのだなと、なんだか新鮮でした。

撮影

午前、午後の部ともにみなさん、とても器用な方が多く、どんどん編み進めていらっしゃいました。

途中

途中2

一周編みあがったら、最初に残しておいた2本のワラと最後のワラ束を交差させてねじり、円盤の中に入れ込みます。これで、編み込み作業は終了です。桟俵の外形が出来上がりました!

最後

最後の入れ込んだ部分をおさえながら、器具から桟俵を取り外します。

はずす

続いて、円周に沿って飛び出している藁束を、内側に丸め込みながら、舟の縁を作っていきます。

丸め込み

丸め込み2

丸め込みとかがり作業

丸め込んだ後は、ぼそぼそと出てこないよう糸でかがっていきます。

糸かがり1

糸かがり2

下の写真ように、糸でかがらずとも、きれいな桟俵ができた方もいらっしゃいました!

糸なし

これで流しびなの舟「桟俵」の完成です! 続いて、レポート(後編)「紙びなづくり&折形」へ。

(後編)で完成する「流しびな」の見本↓

見本

3月いっぱいは、この「流しびな」を室礼に飾っています。どうぞKOKAJIYA2階までお気軽に上がってみてください!

勉強室の様子

また、岩室温泉界隈では「ひな巡り」のイベントも開催中(〜3/22まで)!
※「岩室温泉ひな巡り」詳細は、こちら

ひな巡り

Posted on 2016-03-03 | Posted in お知らせ, 土着ワークショップ [DWS]No Comments »

 

土着ワークショップvol.14「流しびな」づくり 開催!

2月が始まりました。
暦の上ではもうすぐ「立春」となりますが、本格的な積雪もあり、まだまだ冬の勢いは増しそうですね。そうなると待ち遠しいのは、春の空気、草花の芽吹きの季節…。
次回の土着ワークショップは、そんな3月の「ひな祭り」をより一層楽しく迎えるための、「流しびなづくり」をおこないます。

ながしびな

「流しびな」は、あまり馴染みがありませんが、「ひな祭り」の元となったといわれる年中行事。3月3日の節句の夕方に、災いを祓(はら)うために人形を形代(かたしろ)にして、川や海に流す習慣が、京都の下鴨神社や鳥取県用瀬(もちがせ)など、今も各地に残っています。子どもの健やかな成長を願い、祈りを込めて水に流す「流しびな」は、とても愛らしい、ほっこりとさせられる行事です。

流しびな2016

室礼の流しびな

 

今年で3回目になるこの「流しびなづくり」は、桟俵(さんだわら)という稲藁で編んだ船に、紙のひな人形と春の小花をあしらい、作成します。ワークショップに合わせ、お茶とお菓子もご用意します。ぜひ、娘さんやお孫さんへのプレゼントに、また家庭やお店など飾りやお守りとして、手づくりの「流しびな」をつくってみませんか?

・2015年の「流しびな」レポートはこちら
・2014年の「流しびな」レポートは<前半><後半>

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土着ワークショップvol.14 流しびなづくり

日時:2015年2月28日(日)
<第1部>10:30~13:30【2名空席あり】/<第2部>13:30~16:30 【満席となりました】
会場:室礼(KOKAJIYA 2階)
駐車場は「いわむろや」駐車場をご利用ください。
参加費:3,500円(材料・講習費込み、茶菓子付き)
定員: 各回6人
申込み方法:TEL 080-4051-1211(ぐみざわ)
MAIL info@bricole.jp まで。

※小さいお子様がいらっしゃる方も、ご参加可能です。お申込みの際、ご相談ください。
※スタート時間が異なる「2部制」となります。
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★2/1~3/22まで岩室温泉界隈では、“おひな様でおもてなし”「岩室温泉ひな人形巡り」という素敵なイベントも開催中です。ワークショップ当日も、この「ひな人形巡り」と併せてのお出かけがおすすめ!(詳しくは、こちらへ)そして、ぜひランチは「灯りの食邸KOKAJIYA」」にお寄りください!(日曜は、ご予約をおすすめします)

★紙びなの着物はこちらの古布でつくります。好きな布をお選びください↓
古布いろいろ

★昨年のワークショップの写真↓
2015流しびな00

2015流しびな01

2015流しびな02

2015流しびな03

さんだわら

かんせい

ながしびな2

 

【レポート】土着ワークショップvol.13  藁細工/鳥のしめ縄

昨年の12/23、西蒲区福井にある旧庄屋佐藤家にて、13回目の土着ワークショップを行いました。今回初めて挑戦したのは、稲藁を使った「注連縄(しめ縄)」づくりです!

下げ飾りつけ

チラシ画像

毎年、年末になると、スーパーなどに並ぶ神棚用の「注連縄」やお正月用の「しめ飾り」。新年を迎える際の当たり前の光景ですが、先祖や神様の存在を重んじたり、お神酒や供え物ともに、年神様や土地の神様を家に迎え入れたりすることは、日本人が昔から大事にしてきた精神性が表れていて、とてもすてきな風習だと思います。

注連縄とは、神を祀る神聖な場所を他の場所と区別する「結界」の機能をもつもの。8世紀初めに編纂された日本最古の歴史書『古事記』の中に「しりくめなわ」(尻を編んだまま切らないでおいた縄)という、「しめなわ」の大元となった言葉が出てくるほど、古くからあるものです。「外から悪いものが入らないように」と願いや祈りを込め、一般的に稲わらを左周りに縄綯いしてつくられます。その形も、ゴボウジメ、ダイコンジメ、ワカザリ、タマカザリ、マエダレなど(※森 須磨子「しめかざりのかたち」/『民藝 特集:しめ縄 673』より引用)、地域によって本当に様々な形があり、そのバリエーションを見ると、地域性や人間性、個性の違いなどを感じ、とても面白いです。

藁細工職人の山際辰夫さんのお宅に初めて伺った時、山際さんお手製の注連縄と玉〆めを拝見して以来、私(桾沢)はすっかりその魅力に取りつかれてしまいました。注連縄を、年初に玄関に飾ると、心がしゃんとして、お正月が終わっても家の中で飾り、時々それを見ると、日々の忙しさに忘れてしまいそうな「感謝」の気持ちを自然と持てる、不思議なスイッチのようなものだなと感じています。そして、そんな注連縄をいつか自分の手で作りたいと思い、2年越しで今回の企画に至りました。山際さんの注連縄は、素人が作るにはハードルが高いため、入門として「鳥」の形を選びました。鳥の注連縄は、高千穂や広島県のものなどを参考にしてつくりました。

さっそくワークショップの様子をお伝えしていきます。
新潟市内はもちろん、上越、三条、五泉、遠くは山形県鶴岡市から参加してくださった皆さんとともに、佐藤家の囲炉裏のある空間で、山際辰夫さん・ハツさんご夫妻を講師に作業をスタート。

山際さんご夫妻

いろり

材料の稲ワラは、山際さんの田んぼで青刈りしたワラを使用しました。

ワラ

自己紹介のあと、さっそく縄に膨らみを持たせるための「芯」づくりから始めました。

あいさつ

3本の縄を綯うためには、3本の芯が必要です。ワラくずを適量とり、イグサを1本紐代わりにして、巻き付けていきます。

芯づくり

いぐさ

芯づくり2

芯づくり3

真ん中部分が分厚くなるよう、厚みを調節するとともに、なるべく表面が凸凹にならないよう均一に、イグサを巻き付けていくことがポイント。イグサを使う理由は、草の太さが均一で、少し湿らせば、しなやかな紐として使い易いからだと言います。

芯の次は、鳥の頭と尾っぽの間を結ぶ縄をつくるため、「縄綯い(通常の右綯い)」を学びました。

縄綯い

縄綯い2

縄綯い3

「縄を綯う」行為は、頭で考えるよりも、手と足を使って慣れた方がはやく覚えられるようです。

ハツさん

熱心に縄綯いを教えていらした山際ハツさんが、「わたしらは、家が農家だったから、冬は縄綯いがみんなの仕事。現金収入のために、学生の頃から手伝わされたの。1本何十mってやるもんだから、縄綯いなんて、身体にしみついているだわねぇ。」とおっしゃっていたのが印象的でした。

すでに縄綯い経験者の方もいらして、慣れた手つきで綯っていらっしゃいました。

なわない

なわない2

まずは、やりやすい「右縄」の綯い方をマスターしてしまえば、これから行う注連縄の「左縄」も、逆方向に手を動かすだけなので、分かりやすくなると考え、この順番にしました。

わらい

なわない4

なわない3

縄綯いは、最初こそ手こずりましたが、みなさん、途中からはコツを掴み、リズミカルに縄を綯っていました。手が乾燥しているとすべって縄は綯えません。時折、水をつけ、撚りをかけながら、右回りに2本のワラ束を綯っていきます。ワラ束が細くなってきたら、数本を足して続きから綯っていきますと、長い縄の完成です。

続いていよいよ、「注連縄」の縄綯いに入ります。

しめなわ見本
 
太さを均一にするため、同程度のボリュームのワラ束を3つ用意します。

2本結ぶ

そのうちの2つを先から10cmほどのところで麻ひもで固く結びます。

左縄見本2

そして、足でその結んだ部分をしっかりおさえながら、両手を使って、2つの束それぞれに撚りをかけながら、左周りに交差・回転させます。

左縄見本3

次に、作っておいた芯を2本とり、それぞれの束の中に包むように覆い、そこへまた撚りをかけながら、左回りに交差・回転させます。
この撚りをかけながら、左回りに交差・回転を繰り返すと次第に縄はできあがっていきます。途中、芯をはみ出ないように隠しながら、上手に撚りをかけていくと、縄表面の仕上がりがきれいになります。

左縄見本4

左縄ない

左縄ない2

左縄ない3

こうして、尾っぽ側からスタートした縄綯い作業を、鳥の首部分でストップし、適当な場所で麻ひもで縛ってとめます。

親子で

3本目

この左縄の骨格(2本の縄綯い)ができたら、そこに、もう1つのワラ束を絡み付けていきます。まず、尾っぽの先端部分に新たな束の端を合わせ、先ほどの2つの束を麻ひもでとめた位置で再び強く縛ってとめます。そして、芯を入れつつ、撚りをかけて、最初に綯った縄に巻き付けていきます。このとき、巻き付けが甘いと緩んだ注連縄になってしまうため、しっかりと力を入れながら、強く巻き付けます。こうして、注連縄部分は完成。

頭でしばる

頭曲げる

首の付け根部分を麻ひもで縛り、頭の部分は、全部のワラ束を鳥の頭をイメージして折り曲げ、口ばしのあたりでまた縛ります。こうして、鳥の胴体部分は完成です!

鳥の形

鳥の形検討

山際さんは、この「注連縄」づくりのプロ。一見すると、稲わらが「ずりずり」っと自然と手の中で縄になっていくような感じなのですが、触るとしっかりと強く撚りがかかっていて、手や足、全て動きに無駄がありません。30年以上も作り続けている経験が、この「音」と「動き」に凝縮されているのだなと改めて感じます。

しめなわ縄綯い

さて、残るは、足となる「下げ飾り」2つを作るのみ。

下げ飾り

下げ飾りは、足の長さの2倍の長さのワラ束を用意し、真ん中に芯となる短い縄を置き、均一にワラで包み隠し、その中心部分をしっかり紐で縛ります。その後、バナナの皮をむくように、周囲のワラを折り曲げていき、適当な場所で飾り紐(赤い絹の紐)で縛って、仕上げます。

赤い紐

尾と頭つなげる

鳥の尾っぽ、口ばし、足の先を好きな長さや角度で切りそろえます。最初に綯った縄で、尾っぽと頭部分を結んでつなぎ、好きな位置で固定します。

頭調整

下げ飾りつけ

最後に、ボンドで「下げ飾り(足)」を好きな位置に挿んで固定し、鳥の注連縄の完成です!

完成

記念撮影

ここまで3時間弱かかりました。みなさん、初めての挑戦でしたが、お一人お一人思いのこもった、すてきな鳥の注連縄ができあがりました!お疲れ様でした。

柚餅子

終了後には、福井の名物郷土菓子「本間屋の柚餅子」をそれぞれお持ち帰りいただきました。

柚餅子といろり

満足そう

きっと、みなさん充実した年末・年始を過ごされたことでしょう。この注連縄飾りは、お正月期間を過ぎても、部屋に飾ってずっと楽しむことができます。ご自身で稲穂を尾っぽに加えるなど、アレンジされた方もいらっしゃいました。それぞれのご家庭で、「鳥の注連縄」が、厄を払い、家の守り神のような存在になってもらえたら幸いです。

参加者のみなさん、山際さんご夫妻、珈琲を振る舞って下さった山上さん、そして、会場を貸して下さった佐藤家保存会の皆さん、本当にありがとうございました!!

※講師・山際さんのライフワークである「注連縄づくり」についての記事が新潟日報(12/18、夕刊)に掲載されました!後日、お宅を訪ねると、記事が額に入って飾られていました。

記事
【「いい記念になった!」と嬉しそうに語る山際さん】

 

【レポート】土着ワークショップvol.11 干し柿づくり <後編:手もみ>

干し柿づくり<後編:手もみ> レポート

昨年の11/8に<前編>の皮むき&干し作業を終えた「干し柿づくり」。その後、1ヶ月あまりが経過した12/13、室礼にて<後編>の「手もみ」作業を行いました。

手もみ全体てもと

干し柿手もみ前

前編でいわむろやとKOKAJIYAの軒下に干した柿でしたが、干した当日が雨、その後もじっとりとした雨や曇りの日が続き、10日ほど経つ頃、一部の柿にぽつぽつと黒いカビが・・・。

この冬はいつもに増して暖冬、気温の高さと湿度のせいで、柿の表面のじめじめ状態が続いていたのが、柿のコンディションを悪くさせていたのでしょう。さらに柿の大きさも前回の1.5倍!(2Lサイズ)ということで、そもそも柿自身の水分も多かったことが影響したのだと思います。

カビを発見してからすぐに、柿を回収。場所を移して、アルコール35度の焼酎(ホワイトリカー)に1つ1つ浸して(殺菌のため)、干し直しました。それでも半分位の柿がダメになってしまい、なくなく処分することに。干し直すことができた柿は、1週間ほど屋根のある風通りのいい場所で、扇風機の強風を当て続けました。

すると、表面が乾いてきてカビは目立たなくなり、全体が茶色く縮みながら、徐々に干しあがっていきました。カビは水分がないと増えないので、こうなるともう安心。今回、予想外の天候に戸惑いましたが、なんとか柿の全滅を避けることができました。

干し直しをしてからも、ほぼ雪がなく、例年にない暖かさが気がかりでしたが、少しずつ柿も乾いていきました。そして、干し直しから3週間過ぎて、ようやく<後編>の手もみ作業に入ることになりました。

12/13、室礼に集まった参加者のみなさんと、さっそく作業を開始。表面が乾いて硬くなった干し柿を、表面が破れない程度に手で一つ一つ丁寧に揉んでいきます。

手もみ全体風景

手もみアップ

取り出す

手もみをするのは、干し柿の表面に白い粉(糖分)を発生させるため。このひと手間を加えることで、口に入れた時の甘さや味が全然違います。

手のアップ

講師の高塚さんのお話では、柿を揉むことで、中の方に凝縮されていた糖分が表面の方に移動、散らばり、やがて表面で冷やされ、その糖分が結晶化して白い粉となるんだそうです。

手もみ作業

20回くらい押していると、だいぶ柔らかくなり、甘さもしみ出しやすくなるような気がしてきます。そして揉んだ後の柿は、形を整え「ツボ型」にして、再び干します。

おしゃべり2

おしゃべり

和気あいあいとおしゃべりしながら行うと、あっという間に作業は終了していました!

参加者のみなさん、口をそろえて「皮むきや干す作業よりも、手もみ作業の方が楽しい」とおっしゃっていました。「これがやってみたかった」「柿の肌触りが気持ちいい」とも。

試食

最後に、手もみ前の干し柿を少しずつ試食してみました。既にとっても味が濃く、甘い干し柿になっていました。お茶との相性も最高です。これが白い粉が吹くと、さらに美味しくなるはず…。そんな完成を楽しみにしながら、再び柿たちを干場へ移動しました。

〜後日〜
<干し柿、いよいよ完成>

干し柿完成

12/13に手もみを終えた柿は、年末になってようやく白い粉が生え始め、年をまたいで、1月に入り全体が白くなってきました。こうなるともう食べ頃のサイン。

干場全景

干し柿全景2

実は今回、一部手もみしないものを残し、手もみしたものと比べると明らかにその違いがでました。

手もみの有無の違い
【左が手もみなし、右が手もみしたもの】

手もみしたものは白く、手もみしていないものは、ほんの少ししか白い粉が吹きませんでした。これで、手もみの効果をはっきりと確かめることができました。

その後、参加者のみなさんに完成した干し柿をお渡しして、11月から2カ月に渡って続いた今回の「干し柿づくり」も無事、終えることができました。

干し柿は、そのままでは苦くて食べられない渋柿を、自然の力(風や気温の低さ)を巧みに利用し、保存がきき栄養価も高く、かつ美味しい食べ物に変えるという、先人たちが編み出した生活の知恵です。

地域によっては、お正月の年神様への供え物の中にも、串柿(干し柿を串にさしたもの)が見られますし、柿に関する民俗・風習には他にも、「キマブリ(木守り/きまもり)」といって、「来年も実が沢山なるようにと、柿の木の実を1つだけ残す」風習や「成木責め(なりきぜめ)」といって小正月に「柿の幹を傷つけ、お粥をそこに塗って、今年もしっかり実をつけろよと、木に語りかける行為」などがありました。また、柿の利用法(柿酢、柿渋、柿の葉など)や、それぞれの加工・料理のし方などを掘り下げていくと、さらに「柿を楽しむ」可能性は広がってくると思います。

今回の干し柿づくりでは、当たり前ながら、作り手がその年の天候や干す場所の特性を考慮し、ちゃんと手をかけないと失敗してしまうものなのだということを学びました。この経験を生かし、今年もまた「干し柿づくり」に挑戦していきたいと思います。

途中、柿を見守ってくださったKOKAJIYAのメンバーや、<前編>で会場の協力をいただいた「いわむろや」、講師のタカツカ農園の・高塚さんに改めて感謝いたします。

最後に、参加者のみなさまにはご心配をおかけしましたが、気長に完成までお付き合いいただき、ありがとうございました!!ぜひ、またご家庭でもやってみて下さい。そして、干し柿の美味しい料理法などがあれば、ぜひ教えていただければと思います。

干し柿アップ

<前編>のレポートはこちら
2014年の干し柿<手もみ>については、こちら

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「土着ワークショップvol.11干し柿づくり」
◇共催:新潟市岩室観光施設いわむろや、Bricole、KOKAJIYA2F「室礼」
◇協力:灯りの食邸KOKAJIYA、foodrop