2017-08

ENZA w#004「竹カゴ」@室礼 開催レポート ②

8/7開催の「ENZA workshop#004 竹カゴ @三条スパイス研究所」に続き、8/9にKOKAJIYA2F 室礼でおこなった竹カゴづくり<続編>です。

当日、会場に並べておいた竹に関する書籍の数々。

資料

これらは、私たちブリコール主催で、6/3に東京・武蔵野美術大学の民俗資料室のご協力で開催した「ENZA talk#001 & fieldwork#002 暮らしの中の竹とワラ」(暮らしの骨格vol.02)の際に資料として使用した本です。

このイベントは、民俗学者・宮本常一氏の提唱により開設され、膨大な民具資料を収蔵する武蔵野美術大学「民俗資料室」の内部を見て回り(fieldwork)、実際に竹細工や藁の民具を収集された工藤員功さんにお話いただく座談(talk)という構成でした。イベントの記録はまた別の機会に行うとして、今回の「竹カゴ」ワークショップは、あの日武蔵野美術大学まで遠く大分からご参加くださった(!)竹細工職人の三原啓資さんと出会えたことがきっかけで開催に至りました。

enza04

そんないきさつで実現した「ENZA workshop」の4回目。四つ目編みのカゴの「底編み」と「立ち上げ」そして「共縁」とよばれる「縁どめ」の方法を学びました。前回のレポートで製作工程は細かく見ていったので、今回は写真で振り返りつつ、新たな気づきなどを加えていきたいと思います。

三原さん夫妻

まずは、講師の三原啓資さん、萌枝さんご夫妻のこと。プロフィールはこちら。

三原啓資、1968年岡山生まれ。三原萌枝、1985年新潟生まれ。ともに大分県竹工芸訓練・支援センター(別府市)を修了。のちに結婚し、大分県由布市の里山で夫婦で自ら山に入り、竹を切り出し、暮らしの道具として使いやすく丈夫なかご作りを続けている。屋号:笑竹堂

お二人の接点は「大分県竹工芸訓練支援センター(現・訓練センター)」という日本で唯一の公立の竹工芸の教育・訓練機関だそうです。土着ワークショップでも2度竹細工を教えていただいた阿部晋哉さんも、このセンターの前身の一つである「大分県別府高等職業訓練校」のご出身でした。日本唯一というだけあって、竹工芸に関する専門人材の育成を行い、全国の主だった産地へ技術者を送り出す貴重な場になっているこのセンターでは、三原さんのお話では、最近入校希望者が大変多いために、「若手育成」をメインとして、現在は募集年齢を39歳以下、また毎年10名程度の定員と狭き門になっているそうです。やはり「趣味」ではなく、本気で竹細工を学び、本気で今後の竹文化を担っていく人材を育てたいという関係者の方々の切実な想いが感じられます。

ひご準備

奥様の萌枝さんは、竹細工を学びたいと思ったきっかけが、アフリカの草で編んだカラフルなカゴとの出会いがその端緒だったそうです。身の回りにある草を編んでかごをつくる。暮らしの中の素朴なもののなかに、色々な大切なものがぎゅっとつまっていると感じられたのでしょうか。草で編むカゴづくりをきっかけに、日本の竹という素材と出会い、その奥深さに惹かれ竹細工の道に入っていったそうです。でもそこからが長い道のり。ご本人のお言葉では「修行ですね」とおっしゃるように、日々竹と向き合い、竹と対話して、真っ直ぐものづくりに励んでおられる姿勢に、私桾沢(ENZA世話人)も感服です。

お二人は「笑竹堂」という屋号で竹細工を生業とされています。主に青竹を使い「見るためのかご」ではなく「使うかご」を目的に製品作りをされていらっしゃいます。商品としては、収穫・果物カゴや、野菜とるためのカゴ、佐渡の御用籠を応用したもの、丸笊(九州独特のかご、竹で縁を捲く)、なべしきなどがあるそうです。かわいい娘さんと3人で由布市の里山暮らし。いつかお訪ねしてみたいです。笑竹堂として竹カゴの製作のみならず様々な竹や地域に関する活動をなさっているので、そのあたりはぜひ笑竹堂facebookページをご覧いただければと思います。

では、「カゴづくり」に入ります。最初は「四つ目編み」から。
四つ目編み02

四つ目編み03

三原さん、2日前からさらに改良を加え、紙でカゴの成り立ち(立ち上がり)のイメージを説明してくださいました。

説明

曲げ癖をつけるときは、結構力を加えていました。しっかり、左手で押さえつつ、竹の(しなりの)反応をみながらといった感じでしょうか。

曲げくせ

こちらが「力竹」です。立ち上げの編み作業の最中に、カゴの底が丸くならないように入れるものだそうです。今回は後で外したので、「仮力竹」となります。

力竹

立ち上げ01

「立ち上げ」についての三原さん、「かごっていうのは、一か所「崩す」というんですが、平面で編んでいた編み目のどこか一カ所を崩してやる。そうすると立ち上がる(立体になる)んですよね。そこがなかなか面白いんです」とおっしゃっていました。またかご作りの最中、私の「どちらの脳をメインで使っていますか?」との質問に、「数学的というか左脳を使いますね」と答えていらっしゃいました。なるほど、手を動かしながら、頭の中では論理的かつ数学的に思考しているようです。

立ち上げ編み00

初めてやってみると、これが難しいことに気づきます。似たような竹ひごの並びなので、混乱するのかもしれません。しかも、かなり集中力を使います。実は、この後の2枚の写真のお二人は左利き。左利きのお二人が、もともと器用でいらっしゃるのは間違いないのですが、編むスピードがいちばん早かったことが印象的でした。「とても楽しかった。またやりたい!」と感想をいただきました。もしかしたら、カゴのつくりをイメージする絵的な感覚、右脳も関係しているのではないかなと感じました。

立ち上げアップ

立ち上げ編み01

こちらは、神奈川からご参加くださった男性の手。この方も6月の武蔵野美術大学ででのENZAでお会いした行動派!大きな手で器用にカゴを作っていらっしゃいました。

立ち上げ編み02

こちらは、赤ちゃんを連れてご参加いただいたママさん。

お母さん

とっても可愛い赤ちゃんで、思わず撮影!

赤ちゃん

会場内は冷房をつけていましたが、みなさんの集中力と熱気が溢れておりました。

編み風景

そして、一人一人に熱心に教えてくださる三原さんご夫妻。

調整

数え方

7日のワークショップでは、うまくいかなかった「共縁」のやり方も改善。

共縁01

「両手を使い、隣り合う竹ひごを斜めに重ねながら内側から引っ張る」という地道な作業ですが、みなさん黙々と作業されていました。

共縁03

共縁02

縁の部分がしっかりとかみ合って締まったら、最後に縁ぎりぎりのところで、ひごをカットします。

竹カット

カット部分の詳細はこちら。

竹カット詳細

ようやく四つ目カゴの完成です!!ここまで3時間半近くでしょうか。みなさんお疲れ様でした。

さて、竹カゴの管理についての補足で、風通しが悪いとカビてしまうので、引き出しや引き戸の中にしまっておかないで、常に使っていただくことが一番だそうです。もしカビがでても、布(雑巾)で拭いてみて、それでもとれなければ、紙やすりで表面を削ればよいとのこと。ちなみに、カビは竹ひごの表面側ではなく白い方(内側)につくのだそうです。

カゴ完成

終了後はKOKAJIYAの目の前、いつもお世話になっている「角屋悦堂」さんの夏にぴったりな「麩饅頭」をいただきました。笹の葉の緑が綺麗!こちらの笹の葉は、三条市下田のおばあちゃんが採っていらっしゃるのだとか。みずみずしくて美味しかったです。

お茶菓子

こちらは、材料のマダケ(真竹)。三原さんのお話では、日本で竹カゴ作る人はほとんどがマダケを使うそうです。それは繊維が細かく、加工しやすいから。また竹そのものの厚みも5mm程度で、食用にする孟宗竹(15mm)のように分厚くないので、加工がしやすいようです。今回四つ目カゴに使用したひごの厚みは0.5mm。マダケの断面を見ても、上からほんの数mmの表面しか竹細工には使っておらず、あとはゴミになってしまいます。三原さんは住まいが山の方なので、自分のところで燃やしているそうですが、まち場の職人さんたちは廃棄するのも大変なのだとか。

マダケ

ゴミの話が出ましたが、基本的には「竹は持続可能な素材」だそうです。というのも、木だと何十年とかかるところが、竹は3年経てば使える。その再生のサイクルが短いことが竹の良いところだそう。確かに竹林は新潟でも見かけるのですが、住宅地の竹は特に管理が大変で、嫌がられる存在になっていることもしばしば。もしマダケであれば、それをきちんと加工できる人のもとに手渡せたらいいのになぁと、ふと思ったりしますが、九州はマダケが多いそうですが、新潟ではマダケはあまり見られないといいます。食用の孟宗竹が増えたことも一因ではないかと、萌枝さんはおっしゃっていました。

映像

映像では、ご近所の山の竹林で、叩いて竹の硬さ(硬いと高い音がする)を確かめたり、1本5m~8mもある長い竹を伐った後、足場の悪い道を運んだりするのに始まり、足を使って竹を割いていく様子など、ひごができるまでの一連の流れが分かり、その膨大な作業量に頭が下がります。またその過程で、ナタや胴金(九州独特)、幅取り、面取りなど用途に応じた様々な道具が使われ、やはり「素人ではこの繊細な竹ひごを作るのは難しいなぁ」と実感しました。

こちらは三原さんが以前製作されたという「飯かご」。

めしかご

飯かごは、中に布巾を敷いて炊いたご飯を入れ、蓋をして軒下に干すもの。保温ジャーの役割を果たし、かつては家庭でよく見られた生活道具です。取っ手に使われているのは「虎斑(とらふ)竹」という特徴的なまだら模様の竹。この竹は高知だけでしか採れず、その土壌でないとこの模様が出ないそうで、一社しか扱いがないので職人は皆そこから買うのだそうです。

竹は600~1250種類あるともいわれ、日本だけで450種類あるいは600種(諸説あり)あるそうです。三原さんは4年前に佐渡に行かれ「御用かご」を作る職人さんに技術を学んだそうですが、佐渡には「七成(しちなり)かご」(苗を入れる丸みを帯びた腰につけるかご)というものもよく作られていて、これはシノダケ(篠竹)という細い竹を使っていたそうです。日本の主な竹細工の産地を見ていくと、大分はマダケ(真竹)、戸隠は根曲竹、鳥越はスズ竹(篠竹)というふうに、北へ行くほど細い竹が使われており、その風土に合った材料で、また使い道によって形の異なる竹細工が生み出されてきたことがよくわかります。探せば色んな形のカゴがあり、武蔵野美術大学の民俗資料室では様々な地域の竹細工(3000点あるとのこと!)に実際に見ることができ、三原さんも「圧倒された」そうです。

話はまだまだ尽きない様子でしたが、参加者のみなさん、身の回りの竹や竹製品にさらに興味が沸いたのではないかなと思います。ENZAでは引き続き、「竹」について掘り下げていきたいと思っておりますので、次回もお楽しみに!

enzaシツライ集合写真

小さな赤ちゃんの手を見て、この手に何を残していってあげられるのかな、三原さんご夫妻が取り組まれているようなものごとがしっかり残っていったらいいなと思いつつ、ワークショップを終了しました。長いレポートにお付き合い、ありがとうございました!!

赤ちゃんの手

Posted on 2017-08-31 | Posted in ENZA(えんざ), お知らせ, イベントNo Comments »

 

ENZA w#004「竹カゴ」@三条スパイス研究所 開催レポート ①

夏真っ盛りの8/7と8/9、ENZAの4回目のワークショップとして、大分県由布市の竹細工職人、三原啓資さん・萌枝さんご夫妻から学ぶ「竹カゴ(四つ目カゴ)」づくりを2会場で開催しました。

四つ目カゴ

平日にもかかわらず「竹細工」や「カゴづくり」にご関心のあるみなさんが多く集まって下さいました。そして2日とも、講師の三原さんと偶然にも同じ別府の竹工芸訓練(支援)センターで同期の訓練生だったという成田文香さん(新潟市西蒲区在住の若手竹細工職人さん)がワークショップのヘルプに来て下さりました!本当にありがとうございます。

竹細工を本格的にやるには「竹ひごづくり」からなので相当に時間と労力がかかります。そこを事前に三原さんが何から何までご準備いただき、3時間ちょっとという短い時間で最後の「編みと縁どめ」の体験を通じ、また職人直々のお話を通して竹細工の奥深さ、楽しさの一端に触れるとても良い機会になりました。

ではさっそく、8/7のワークショップの模様をレポートしていきます!(8/9のワークショップレポートはまた後日。)

ENZA4スパ研集合写真

竹細工の日本一の産地、大分から来新された講師の三原啓資さん・萌枝さんご夫妻。お二人は「笑竹堂」という屋号で、大分の青竹(マダケ)をメインに使った竹かごや生活道具をつくることを生業にされている竹細工職人さんです。実は萌枝さんのご実家が三条市ということで、ご縁あって今回のワークショップが実現しました!

ENZA三原さんご夫妻

会場の「三条スパイス研究所」は、この日最高気温39度という猛暑日。そんな暑い日の午後、屋根だけのほぼ屋外という「えんがわ」空間でワークショップはスタートしました。

ENZA4材料

カゴの材料となる竹ひごは、由布市の三原さん宅のご近所のマダケの竹林から伐り出して加工して下さったものを使いました。厚さ0.55mm、幅7mmに揃えられたひごは、今年の1月に伐り出し、乾燥させたものだそう。

マダケ

しなやかでうっすら青みが残っていて、「こんなに薄いんだ」「揃っていてきれい」とみなさん驚いていました。一人一人に三原さんお手製の「四つ目編み」をきれいにするための下敷きと24本のひごが配られ、最初はこの下敷きの上で、編み作業を行っていきます。

下敷き

縦2本・横2本、計4本のひごを編み、そこから下敷きのとおりに「節」の位置(わかりやすく色がついている!)を合わせながら、上・右・左・下に5本ずつひごを編み込んでいきます。

編みはじめ

編む時は、どちらのひごが上かを確認しながら、上にもっていくひごは「すくい」、下にするひごは「おさえ」といいますが、1本とばしに「すくい」と「おさえ」を繰り返して編み込みます。右利きの方は、左手ですくう(上にくる)竹ひごを浮かせて、そこへ右手でひごを入れ込むというかたち。

編み途中

一見簡単なようで、この四つ目編みは「簡単だからこそ竹ひごが動きやすく、きれいに目を保つのが難しいんです」と啓資さん。確かに編み作業の最中に、油断するとひごがすべって位置がずれていくことがしばしば…。

編み作業中

なんとか1周、計24本をひごを編み込んだら、平面は完成!

とめひご

いったん、四辺の縁を別の竹ひご(とめひご)で仮止めしていきます。

とめひご2

これで編んだひごが固定されずれにくくなります。(※とめひごは後ほど外す)

とめひご3

このあとは「立ち上げ」といって、かごにしていく(2Dから3Dにしていく)一番気を遣うけど、竹細工の面白さ、不思議さの一つがここにあると言っても過言ではない作業にうつります。

きりふき

この時、竹に無理な力がかかって折れないよう霧吹きでしっかり濡らしながら、かご底の「四辺」となる部分を両手でしっかりめに折り曲げ、くせづけをします。

くせづけ

竹はしなやかなので、多少の折り曲げには強いようで、直角よりも多い「120度くらい」まで曲げたでしょうか。くせをつけました。

くせづけ終了

またこのタイミングで「力竹(ちからだけ)」というかごの強度や突っ張りを強くするための竹を、底の部分にばってんにして挿します。今回の竹カゴは、あまり重いものを入れないという前提なので、後でこの力竹は外しました。

もえさん

丸める

その後、かごの底の四つ角となる場所(起点)から、上にむかって左右の竹ひごを編み込んでいきます。このとき、先ほどの「とめひご」はひごの数に入れないので、注意しながら編みます。このときのポイントは、かごを完成形に近くなるように少し手で力を加え、全体に丸みを帯びさせながら、編んでいくことだそう。

立ち上げ

立ち上げたの時は、ひごとひごの間の四角がひし形のようになったり、広くなったり狭くなっりと大きさや形にに違いが出てきやすくなります。そのため、いつも底の下敷きの通りに編んだ、あの編み目(四角い空間)くらいになるように意識して、立ち上げます。

立ち上げ2

四つ角があるうちの、1つの角を挟んだ左右のひごを編んだら、その対角線上にある反対側の角を起点に編みます。

立ち上げ3

こうして、4つの角で編み終わったら、このような形に。ひごとひごの間の空間が、きれいな四角になるように細かな調節を繰り返し、また次の作業(右利きの人にとって止めやすい縁のとめ方)のために、編み込みすぎた部分をほどいていきます。詳しくは、ばってん(×)になった部分で、必ず右から左上に向かっている竹ひごが常に上になるようにしておきます。

かごのよう

この時点でもうカゴ然としていていい感じですが、ここからが最後の仕上げ「縁どめ」の作業です。

縁の止め方は色々ですが、今回は「共縁」といって編み上げた竹ひごのみを使って、斜めにうまく重ね合わせていって、ひご同士が固定され動かなくなる縁どめの方法を学びます。

ふちどめのまえ

先ほど右から左に向かってぴらぴらと開いている竹ひごを1本右手に持ち、山型に左に曲げながら、左から右へ向いた竹ひご4本の下(★)をくぐらせ、先ほどの「×」部分のすぐ下の四角い穴を含めて6つ目の「穴」めがけて差し込みます。(文章ではなかなかわかりにくいですね。参加された方は備忘録まで)

やんわり縁

これを平行に左側に向かって同じように繰り返していくと、最初はやんわりとした縁ができます。

きつめる

きつめる2

それを今度は「穴」の後ろから竹ひごを引っ張り、徐々に徐々にひご同士を、隙間のないようにしっかり締めでいきます。

未完成

実はこの日「共縁」の工程がうまくいかず、未完成でのお渡しとなってしまいました。参加者のみなさまには、申し訳ございませんでした。この場をお借りしてお詫びいたします。

ともぶち(★)ここが写真では2本になっていますが、実際には4本のひごをとります!

原因は翌日には解決!(★)のところの本数を2本とご案内していたことが原因だとわかりました。すぐに修正して、8/9の室礼でのワークショップでは、みなさんしっかり仕上げることができました!(7日ご参加者の皆様には、後日仕上げの方法を描いたお手紙と完成版の竹カゴを別途三原さんが送ってくださりました)

文字にすると伝わりづらいですが、編みから縁の仕上げまで、みっちりやって3時間ちょっと。過酷な環境ながら、みなさん最後まで一生懸命にかご作りに励んでいらっしゃいました。お疲れ様でした。

もなかアイス

最後に、スパイス研究所のご近所にある「お菓子司 うえき」さんの「もなかアイス(抹茶やイチゴ、小豆、バニラなど)」を食べながら、三原さんより「笑竹堂のこと」「竹の伐採~ひごづくりまで」や「台湾や中国での出張ワークショップの様子」「別府の竹細工のビデオ」を映像で見ながらのお話を伺って、ワークショップは終了となりました。

おはなし2

談笑

印象的だったお話をいくつかご紹介します。

●まず、竹ひごつくりの工程で行う「面取り」という作業について。
ちょうど断面から見ると、台形のようにひごがなっていて、編む時やまた製品になった時も、表面のひごの手触りが角張っていなくて、滑らかになります。一つ一つのひごにそのような加工がされているのかと思うと、気の遠くなるような作業の積み重ねです。職人さんの地道な手作業が、あのやさしいぬくもりある肌触りを生んでいるのだなと納得しました。

あじろあみのカゴ

さらに今回の竹では行っていませんが、「磨き」という竹の表面を削る加工もあるのだとか。これは職人さんのこだわり、あるいは使う人の好みにもよるのだそうですが、この「磨き」を行うと、時間が経つにつれて、竹の色が「飴色」に変化していくのだそうです。その使い込まれた、時を経て醸される美しさは、やはり竹細工ならではの味わいではないかと思います。今度、お店や博物館などで竹細工を眺めることがあるならば、ぜひ表面にも気をつけて見てみるとよいのではないかと思います。

●次に竹製品のメンテナンスについて。
竹は湿気を嫌います。風通しの悪いところ、湿気のたまるところに置いておくと、カビが生えてしまいます。特に今回のカゴはそこまで気を遣わなくてもよいそうですが、流れている空気に触れさせることで、長く使うことができるとおっしゃっていました。竹製品を長持ちさせるには、やはり湿気は禁物だそうです。

●最後に竹林、里山の保全について。
三原さんの住んでいらっしゃる由布市は、竹林も多く周囲は里山なのだそう。その近隣の里山資源を生かしながら、竹細工を生業とされているため、「里山を守る」「持続可能である」ということを、製品作りにおいても生活においても第一に考えていらっしゃいます。特に竹林は全国的にみても、質の高いマダケが手に入る九州にありながら、年々持ち主の高齢化などによって竹林の管理ができなくなってきているとのこと。そこで三原さんは、自分が無償で竹を譲ってもらうかわりに、間伐の作業を行い、竹林を守る活動を続けているのだそうです。三原さんご夫妻の竹細工は、そのような住んでいる里山を守りながらその資源を生かす、土地と暮らしとが直結したものになっています。

三原さんご夫妻 [笑竹堂faceboookより]

そんなお二人は、決して大分に留まるのではなく、様々な場所へ出向いて竹製品を販売したり、各地の職人の元を訪ね技術を学んだり、そしてまた今回のワークショップもそうですが、竹の文化を伝え、身近な里山の保全についても理解を広める精力的な活動をなさっていることに、非常に共感を覚えました。そして最近、今注目の「民泊」ができるよう営業許可をとられたのだそう。今後のお二人のご活躍が楽しみです!

おはなし

この日、ENZA世話人の私・桾沢も一緒にカゴづくりをさせていただきましたが、四つ目編みの途中でひごが折れてしまったり(三原さんご夫妻の息の合った修正に助けられました!)、「立ち上げ」のところも難しかったです。それでも平面からカゴになっていく面白さはなんともいえないものがあり、竹という素材の自由度と機能性に驚きました。そして、三原さんご夫妻のように竹細工の技を過去から継承し、各地域で職人さんたちが地道に守り、頑張っておられることに改めて感動した次第です。

息のあった修正

みなさん、本当に暑い中ありがとうございました!堀田さんはじめ、三条スパイス研究所のスタッフの皆様にもこの場を借りてお礼申し上げます!2日後、ENZA Workshop#004「竹カゴ」は、室礼での開催につづく…。

ENZAスパ研