ENZA(えんざ), お知らせ, イベント

ENZA w#004「竹カゴ」@室礼 開催レポート ②

8/7開催の「ENZA workshop#004 竹カゴ @三条スパイス研究所」に続き、8/9にKOKAJIYA2F 室礼でおこなった竹カゴづくり<続編>です。

当日、会場に並べておいた竹に関する書籍の数々。

資料

これらは、私たちブリコール主催で、6/3に東京・武蔵野美術大学の民俗資料室のご協力で開催した「ENZA talk#001 & fieldwork#002 暮らしの中の竹とワラ」(暮らしの骨格vol.02)の際に資料として使用した本です。

このイベントは、民俗学者・宮本常一氏の提唱により開設され、膨大な民具資料を収蔵する武蔵野美術大学「民俗資料室」の内部を見て回り(fieldwork)、実際に竹細工や藁の民具を収集された工藤員功さんにお話いただく座談(talk)という構成でした。イベントの記録はまた別の機会に行うとして、今回の「竹カゴ」ワークショップは、あの日武蔵野美術大学まで遠く大分からご参加くださった(!)竹細工職人の三原啓資さんと出会えたことがきっかけで開催に至りました。

enza04

そんないきさつで実現した「ENZA workshop」の4回目。四つ目編みのカゴの「底編み」と「立ち上げ」そして「共縁」とよばれる「縁どめ」の方法を学びました。前回のレポートで製作工程は細かく見ていったので、今回は写真で振り返りつつ、新たな気づきなどを加えていきたいと思います。

三原さん夫妻

まずは、講師の三原啓資さん、萌枝さんご夫妻のこと。プロフィールはこちら。

三原啓資、1968年岡山生まれ。三原萌枝、1985年新潟生まれ。ともに大分県竹工芸訓練・支援センター(別府市)を修了。のちに結婚し、大分県由布市の里山で夫婦で自ら山に入り、竹を切り出し、暮らしの道具として使いやすく丈夫なかご作りを続けている。屋号:笑竹堂

お二人の接点は「大分県竹工芸訓練支援センター(現・訓練センター)」という日本で唯一の公立の竹工芸の教育・訓練機関だそうです。土着ワークショップでも2度竹細工を教えていただいた阿部晋哉さんも、このセンターの前身の一つである「大分県別府高等職業訓練校」のご出身でした。日本唯一というだけあって、竹工芸に関する専門人材の育成を行い、全国の主だった産地へ技術者を送り出す貴重な場になっているこのセンターでは、三原さんのお話では、最近入校希望者が大変多いために、「若手育成」をメインとして、現在は募集年齢を39歳以下、また毎年10名程度の定員と狭き門になっているそうです。やはり「趣味」ではなく、本気で竹細工を学び、本気で今後の竹文化を担っていく人材を育てたいという関係者の方々の切実な想いが感じられます。

ひご準備

奥様の萌枝さんは、竹細工を学びたいと思ったきっかけが、アフリカの草で編んだカラフルなカゴとの出会いがその端緒だったそうです。身の回りにある草を編んでかごをつくる。暮らしの中の素朴なもののなかに、色々な大切なものがぎゅっとつまっていると感じられたのでしょうか。草で編むカゴづくりをきっかけに、日本の竹という素材と出会い、その奥深さに惹かれ竹細工の道に入っていったそうです。でもそこからが長い道のり。ご本人のお言葉では「修行ですね」とおっしゃるように、日々竹と向き合い、竹と対話して、真っ直ぐものづくりに励んでおられる姿勢に、私桾沢(ENZA世話人)も感服です。

お二人は「笑竹堂」という屋号で竹細工を生業とされています。主に青竹を使い「見るためのかご」ではなく「使うかご」を目的に製品作りをされていらっしゃいます。商品としては、収穫・果物カゴや、野菜とるためのカゴ、佐渡の御用籠を応用したもの、丸笊(九州独特のかご、竹で縁を捲く)、なべしきなどがあるそうです。かわいい娘さんと3人で由布市の里山暮らし。いつかお訪ねしてみたいです。笑竹堂として竹カゴの製作のみならず様々な竹や地域に関する活動をなさっているので、そのあたりはぜひ笑竹堂facebookページをご覧いただければと思います。

では、「カゴづくり」に入ります。最初は「四つ目編み」から。
四つ目編み02

四つ目編み03

三原さん、2日前からさらに改良を加え、紙でカゴの成り立ち(立ち上がり)のイメージを説明してくださいました。

説明

曲げ癖をつけるときは、結構力を加えていました。しっかり、左手で押さえつつ、竹の(しなりの)反応をみながらといった感じでしょうか。

曲げくせ

こちらが「力竹」です。立ち上げの編み作業の最中に、カゴの底が丸くならないように入れるものだそうです。今回は後で外したので、「仮力竹」となります。

力竹

立ち上げ01

「立ち上げ」についての三原さん、「かごっていうのは、一か所「崩す」というんですが、平面で編んでいた編み目のどこか一カ所を崩してやる。そうすると立ち上がる(立体になる)んですよね。そこがなかなか面白いんです」とおっしゃっていました。またかご作りの最中、私の「どちらの脳をメインで使っていますか?」との質問に、「数学的というか左脳を使いますね」と答えていらっしゃいました。なるほど、手を動かしながら、頭の中では論理的かつ数学的に思考しているようです。

立ち上げ編み00

初めてやってみると、これが難しいことに気づきます。似たような竹ひごの並びなので、混乱するのかもしれません。しかも、かなり集中力を使います。実は、この後の2枚の写真のお二人は左利き。左利きのお二人が、もともと器用でいらっしゃるのは間違いないのですが、編むスピードがいちばん早かったことが印象的でした。「とても楽しかった。またやりたい!」と感想をいただきました。もしかしたら、カゴのつくりをイメージする絵的な感覚、右脳も関係しているのではないかなと感じました。

立ち上げアップ

立ち上げ編み01

こちらは、神奈川からご参加くださった男性の手。この方も6月の武蔵野美術大学ででのENZAでお会いした行動派!大きな手で器用にカゴを作っていらっしゃいました。

立ち上げ編み02

こちらは、赤ちゃんを連れてご参加いただいたママさん。

お母さん

とっても可愛い赤ちゃんで、思わず撮影!

赤ちゃん

会場内は冷房をつけていましたが、みなさんの集中力と熱気が溢れておりました。

編み風景

そして、一人一人に熱心に教えてくださる三原さんご夫妻。

調整

数え方

7日のワークショップでは、うまくいかなかった「共縁」のやり方も改善。

共縁01

「両手を使い、隣り合う竹ひごを斜めに重ねながら内側から引っ張る」という地道な作業ですが、みなさん黙々と作業されていました。

共縁03

共縁02

縁の部分がしっかりとかみ合って締まったら、最後に縁ぎりぎりのところで、ひごをカットします。

竹カット

カット部分の詳細はこちら。

竹カット詳細

ようやく四つ目カゴの完成です!!ここまで3時間半近くでしょうか。みなさんお疲れ様でした。

さて、竹カゴの管理についての補足で、風通しが悪いとカビてしまうので、引き出しや引き戸の中にしまっておかないで、常に使っていただくことが一番だそうです。もしカビがでても、布(雑巾)で拭いてみて、それでもとれなければ、紙やすりで表面を削ればよいとのこと。ちなみに、カビは竹ひごの表面側ではなく白い方(内側)につくのだそうです。

カゴ完成

終了後はKOKAJIYAの目の前、いつもお世話になっている「角屋悦堂」さんの夏にぴったりな「麩饅頭」をいただきました。笹の葉の緑が綺麗!こちらの笹の葉は、三条市下田のおばあちゃんが採っていらっしゃるのだとか。みずみずしくて美味しかったです。

お茶菓子

こちらは、材料のマダケ(真竹)。三原さんのお話では、日本で竹カゴ作る人はほとんどがマダケを使うそうです。それは繊維が細かく、加工しやすいから。また竹そのものの厚みも5mm程度で、食用にする孟宗竹(15mm)のように分厚くないので、加工がしやすいようです。今回四つ目カゴに使用したひごの厚みは0.5mm。マダケの断面を見ても、上からほんの数mmの表面しか竹細工には使っておらず、あとはゴミになってしまいます。三原さんは住まいが山の方なので、自分のところで燃やしているそうですが、まち場の職人さんたちは廃棄するのも大変なのだとか。

マダケ

ゴミの話が出ましたが、基本的には「竹は持続可能な素材」だそうです。というのも、木だと何十年とかかるところが、竹は3年経てば使える。その再生のサイクルが短いことが竹の良いところだそう。確かに竹林は新潟でも見かけるのですが、住宅地の竹は特に管理が大変で、嫌がられる存在になっていることもしばしば。もしマダケであれば、それをきちんと加工できる人のもとに手渡せたらいいのになぁと、ふと思ったりしますが、九州はマダケが多いそうですが、新潟ではマダケはあまり見られないといいます。食用の孟宗竹が増えたことも一因ではないかと、萌枝さんはおっしゃっていました。

映像

映像では、ご近所の山の竹林で、叩いて竹の硬さ(硬いと高い音がする)を確かめたり、1本5m~8mもある長い竹を伐った後、足場の悪い道を運んだりするのに始まり、足を使って竹を割いていく様子など、ひごができるまでの一連の流れが分かり、その膨大な作業量に頭が下がります。またその過程で、ナタや胴金(九州独特)、幅取り、面取りなど用途に応じた様々な道具が使われ、やはり「素人ではこの繊細な竹ひごを作るのは難しいなぁ」と実感しました。

こちらは三原さんが以前製作されたという「飯かご」。

めしかご

飯かごは、中に布巾を敷いて炊いたご飯を入れ、蓋をして軒下に干すもの。保温ジャーの役割を果たし、かつては家庭でよく見られた生活道具です。取っ手に使われているのは「虎斑(とらふ)竹」という特徴的なまだら模様の竹。この竹は高知だけでしか採れず、その土壌でないとこの模様が出ないそうで、一社しか扱いがないので職人は皆そこから買うのだそうです。

竹は600~1250種類あるともいわれ、日本だけで450種類あるいは600種(諸説あり)あるそうです。三原さんは4年前に佐渡に行かれ「御用かご」を作る職人さんに技術を学んだそうですが、佐渡には「七成(しちなり)かご」(苗を入れる丸みを帯びた腰につけるかご)というものもよく作られていて、これはシノダケ(篠竹)という細い竹を使っていたそうです。日本の主な竹細工の産地を見ていくと、大分はマダケ(真竹)、戸隠は根曲竹、鳥越はスズ竹(篠竹)というふうに、北へ行くほど細い竹が使われており、その風土に合った材料で、また使い道によって形の異なる竹細工が生み出されてきたことがよくわかります。探せば色んな形のカゴがあり、武蔵野美術大学の民俗資料室では様々な地域の竹細工(3000点あるとのこと!)に実際に見ることができ、三原さんも「圧倒された」そうです。

話はまだまだ尽きない様子でしたが、参加者のみなさん、身の回りの竹や竹製品にさらに興味が沸いたのではないかなと思います。ENZAでは引き続き、「竹」について掘り下げていきたいと思っておりますので、次回もお楽しみに!

enzaシツライ集合写真

小さな赤ちゃんの手を見て、この手に何を残していってあげられるのかな、三原さんご夫妻が取り組まれているようなものごとがしっかり残っていったらいいなと思いつつ、ワークショップを終了しました。長いレポートにお付き合い、ありがとうございました!!

赤ちゃんの手

Posted on 2017-08-31 | Posted in ENZA(えんざ), お知らせ, イベントNo Comments »