お知らせ, 土着ワークショップ [DWS]
【レポート】土着ワークショップvol.14 「流しびな」(①前編:桟俵)
ツイート新潟も少しずつ寒暖を繰り返しつつ、春めいた空気を感じるようになってきた2月の終わり。2016年に入って最初の土着ワークショップ(DWS)となる「流しびな」づくりを開催しました!
「流しびな」は、「ひな祭り」の元となったといわれる年中行事。旧暦3月3日の節句の日に、災いを祓(はら)うために人形を形代(かたしろ)にして、けがれをのせて川や海に流す習慣が、京都の下鴨神社や鳥取県用瀬(もちがせ)などで、今も各地に残っています。子どもの健やかな成長を願い、祈りを込めて水に流す「流しびな」。その藁細工の舟や紙びなの造形がすてきなので、ひな祭りに向け、飾るための「流しびな」をつくるワークショップを室礼ではこれまで2回行ってきました。
今回は3回目ということで、初めて午前と午後の2部に分けて行いました。午前・午後の写真を織り交ぜながら、(前編)=桟俵づくり、(後編)=紙びなづくり&折形に分けて、当日のレポートをしていきたいと思います。
午前中は、新潟日報さんが取材に来られ、参加者の方へのインタビューがあったりと、いつもと少し違った雰囲気に。幸い外はうっすらと晴れ、自然光の入る室礼の空間で、おだやかなワークショップがスタートしました。
最初は、稲藁(わら)でつくる舟の「桟俵(さんだわら)」づくりです。材料の稲藁は、岩室温泉のすぐご近所「夏井のはさ木」で知られる夏井の稲作農家さんから分けていただいた、はさがけ米の“干し藁”を使用。
昔の人は、お米を手作業で天日に干し、脱穀して残った稲わらを、様々な生活の道具に利用してきました。特に農家の人にとっては、冬の農閑期の藁仕事が生活を、家計を支えていました。それが今では、機械によって収穫の際に、ほぼ全て細かく砕かれて田んぼにまかれるため、米どころ新潟といえども、なかなか藁自体は手に入りにくいものになっています。
そんな稲藁を穂先から根元まで無駄なくすべてを使い切るという、かつての人々の知恵にならい、私たちブリコールでは、2013年から土着ワークショップの中で、藁細工に取り組んできました。「桟俵」は、いわゆる米俵の側面に使われる「ふた」の部分のこと。本物の米俵は大きさが大きいので、大人の男性が丸い石の重しを藁の上に乗せ、その上にのっかって編み込んでいく作業を行っていくのが、かつては当たり前に見られた光景だったそうです。
「流しびな」の桟俵は、紙びなを乗せる舟なので、直径は20cm程度。その上にのっかって全身で作業するには、小さすぎて大変です。そこで西区在住・藁細工職人で、いつもお世話になっている講師の山際辰夫さんが手元で座って作業できるお手製の木製器具を考案。それを私たちが、コピーさせてもらってワークショップでは使っています。
一人ずつ配られた藁の束をまず、根本をそろえ、下から25~30cm位のところで強く縛ります。山際さんは強く縛るために、測量用の糸を使っているとのこと。ポイントはしっかり強くしばることです。
続いてバナナの皮のように、縛った中心部分から片側をしっかりと、均一になるよう折り曲げていきます。
片側が終わったら、上下を反対にして、もう片方も折り曲げます。
このとき、床に結んだ中心部を押し当てながらやるとうまく折れます。
このようなかたちで、稲わらに折りくせがついたら、木製器具の円盤2枚で挟み込んでいきます。このとき、稲の根元がある方の面を上側にして、下側の面に穂先(細い方)がくるようにすると、紙びなの背後にくる俵の内面の稲わら(根元の太い方)が綺麗に見えます。
中心がずれないようにはさみ、しっかりと器具本体にネジで固定します。
きっちり固定するまえに、全体的に稲藁が均等にくるように調整しなおし、均一に広がったらしっかりと固定します。そして、円盤(直径20cm)の外側のラインから10~15cmのところで、稲わらを切りそろえます。
まあるく切り揃ったライオンのたてがみのようになったら、いよいよ編み作業のスタートです。
まず最上部で、左手に6本程度のワラ束(A)をつかみ、右手にその隣のワラ束(B)を5本程度つかみます。Bをそのまま少し垂直にたてておき、Aを2回Bに絡ませ(回す)、Aのうち2本をそのままに、残りの4本を右横に倒しておきます。次に、右となりの4,5本のワラ束(C)をつかみ垂直におこし、その後ろでBを右に曲げます。次のワラ束(D)を掴み、Cをその後ろで右に曲げていく・・・この作業を円盤の縁になるべく線が揃うように繰り返していき、最初の地点まで戻ります。
はさがけした稲わらの場合、乾燥が強いため、ワラが途中で切れないよう霧吹きで水分を含ませながら編み作業をするのがポイント。
編み込む位置をきれいに円盤の外周に沿って進めるときれいな円に仕上がります。
新潟日報の西蒲エリアを担当する記者の方が、「地域欄」掲載のために、流しびなの見本と作業中の風景とを両方交えながら、「はい、じゃあこれで撮りますよ~」とセッティングして撮影されていました。土着ワークショップでは、いつも沢山の記録写真を撮るのですが、こういった取材は初めてだったので、こんな風に撮影するのだなと、なんだか新鮮でした。
午前、午後の部ともにみなさん、とても器用な方が多く、どんどん編み進めていらっしゃいました。
一周編みあがったら、最初に残しておいた2本のワラと最後のワラ束を交差させてねじり、円盤の中に入れ込みます。これで、編み込み作業は終了です。桟俵の外形が出来上がりました!
最後の入れ込んだ部分をおさえながら、器具から桟俵を取り外します。
続いて、円周に沿って飛び出している藁束を、内側に丸め込みながら、舟の縁を作っていきます。
丸め込んだ後は、ぼそぼそと出てこないよう糸でかがっていきます。
下の写真ように、糸でかがらずとも、きれいな桟俵ができた方もいらっしゃいました!
これで流しびなの舟「桟俵」の完成です! 続いて、レポート(後編)「紙びなづくり&折形」へ。
(後編)で完成する「流しびな」の見本↓
3月いっぱいは、この「流しびな」を室礼に飾っています。どうぞKOKAJIYA2階までお気軽に上がってみてください!
また、岩室温泉界隈では「ひな巡り」のイベントも開催中(〜3/22まで)!
※「岩室温泉ひな巡り」詳細は、こちらへ