お知らせ, 土着ワークショップ [DWS]
土着ワークショップvol.9 「流しびな」レポート
ツイート3月1日、空気もまだ冷たい中、土着ワークショップvol.9「流しびな」づくりを行いました。
「流しびな」は、現在のひなまつりの原形にあたるようなもので、形代(穢れをそれに託す)として紙の人形(ひとかた)をつくり、女の子が健やかに育つよう祈りを込めて「桟俵(さんだわら)」というワラ細工の船に乗せ、川へ流すという風習が古くからあります。鳥取の用瀬(もちがせ)や京都の下鴨神社にはその風習や神事が残り、今もその風情ある催しは、桃の節句の日に行われています。
ここ新潟でも「桟俵」はかつては身近なもので、米俵の側面に使われていた藁細工です。米俵が使われなくなり、すっかり身近ではなくなってしまった「桟俵」を自分の手でつくり、雛祭りに贈ったり飾ったりできて、愛着の持てる「流しびな」をつくってみようということで、昨年から始めたこの企画。
まず、材料はこちら。
講師の山際辰夫さんが、お正月飾り用に昨年拵えた青刈りした稲わらと、山際さんが発案された「桟俵」づくりのための道具です。
上の写真は、米俵に使う「桟俵」。これを作るには、石臼などを重しにしたり、人が上から乗って編んでいくというのが通常なのですが、飾り用のものは小さいため、上から乗るのは難しいということで、山際さんが円板2枚で挿んで、座りながら手元で編める道具をお考えになったそうです。前回は段ボールで作っていた円板ですが、改良を加えてこのたび木製になりました。
今回のワークショップは、小学1年生のお子さんも参加してくれました!「流しびな」の説明をした時、「それ、絵本でみたよ」と教えてくれました。探したら確かにありました!
絵本『ながしびなのねがいごと』(岡信子著、イラスト:広川 沙映子、世界文化社/1987)
今は手に入りにくいようで、後日さっそく図書館で予約し、借りることができました。ひなまつりに読んであげたい絵本、おすすめです。5歳の娘も気に入っています。
さっそく「桟俵」づくりに入ります。
一人あたりこのくらいと、手の感触で分量を分けます。
根元に近い方を揃え、40㎝程度に切ります。真ん中はギュッと固く麻ひもなどで結びます。
ワラ束をバナナの皮むきのように半分のところまで折り曲げ、均一な円盤となるように広げます。
上半分、下半分それぞれ広げると、平らな円盤状のものになります。
それを2枚の円板ではさみながらネジで道具に固定。このとき+ドライバーでしっかり、まっすぐ固定することが肝心です。
固定できたら、いよいよ編み作業へ。「編み」といっても複雑な作業ではなく、3本程度のワラを掴み、隣りの3本程度のワラに交差させ最初のワラ束を横に倒す。それをひたすら一周分繰り返すのですが、円板の淵に沿って、同じ本数だけわら束をつかむ。この2点に注意さえすれば、スムーズに仕上がりもきれいにできます。
山際さんも一人一人ていねいに教えてくださるので、コツさえつかめば、あとはやるのみ!
親子でつくるのも、とても楽しそうです。
小学生も最後まで編み作業を頑張っていました。
そして最後の仕上げ工程へ。最初と最後のワラ束を交差させ、数回ねじって糸で結んで固定します。
はみ出したワラのささくれは、はさみで切って表面をきれいに仕上げます。
これで、「桟俵」は完成。
最初は後ろの方で見ていたスイス人のパパも途中参加し、初めてのワラ細工に挑戦することに。
とても器用な方で、あっという間に技をマスターされていました!
続いて、紙びな人形づくりです。
用意しておいた、ムース粘土の顔と厚紙の人形。お好みの古裂をきもの用に選び、ボンドで貼り付けます。最後は、お顔書き。
実はお顔書きが、一番緊張する作業。失敗しないように、油性ペンで紙びなに命を吹き込みます。
最後は、人形とともに飾り用の桃の花と菜の花を添え、桃の花は「折形(おりかた)」とよばれる伝統的な包みの手法で「花包み」仕立てにして飾りました。
無事みなさん完成して、恒例の記念写真をパチリ!
十人十色な「流しびな」はとっても愛らしく、どれも心のこもった作品に仕上がったなと思います。
その後は、完成した「流しびな」を眺めながら、お茶会がスタート!
1F、KOKAJIYAスタッフの清水直子さんはじめ皆さんが、今回のために「流しびな」をイメージしたチョイスとすてきなセンスでお茶と甘味を用意してくれました。
お茶会メニューはこちら
・お抹茶(小鍛冶屋に残された茶碗・茶さじ・茶托を使って)
・角屋悦堂の水ようかん(岩室温泉の老舗和菓子屋さんの冬の看板メニュー!)
・「水に流す」をイメージした波の干菓子
・清水さんお手製のひなあられ
一人一人違うお茶碗でいただいたお抹茶に、ほどよい甘さで口どけのよい水ようかんがよく合って、どれもとても美味しかったです。実はKOKAJIYAスタッフが前もって、角屋悦堂の奥様にお茶のたて方を教わりに行っていたとのこと。
もともと小鍛冶屋では、住んでおられたご夫婦が地域の方にこの2階でお茶やお花を教えていらしたというご縁から、茶碗や茶さじなどさまざまな道具が残されていました。それをこうして再び使うことができたのも嬉しい偶然です。KOKAJIYAのある岩室温泉。この地域の持つ文化や小鍛冶屋という場の潜在性、地域の方に支えられていることを改めて実感したお茶会でした。
3時間に及ぶ長丁場のワークショップでしたが、最後まで和やかに、子どもたちも一緒にひな祭り気分を味わうことができました。ご参加の皆様、きめ細やかな準備をしてくれたKOKAJIYAスタッフに感謝です!
また来年も続けていきたいと思います。